
ポリネーター(送粉者)とは、ハチやハナアブのように、花から花へ花粉を運んで植物の受粉を助ける生き物のことです。北アフリカのモロッコで行われた研究では、ソラマメ畑のまわりにコリアンダーやナタネなど「収穫して売れる花」を帯状に植えたところ、ポリネーターの種類や数が増え、害虫が減り、農家の純収入は小さな畑(300 m²)で108%、大きな畑(1 ha)で36%増えたと報告されています。効果は小さな畑ほど大きかったものの、畑の面積のわずか7%を花の帯にした大きな畑でも、1年目から収入の増加が確認されました。
この記事では、2025年11月に学術誌「Insects」に掲載されたこの論文をもとに、ポリネーターを守りながら収入も増やす「FAP」という畑づくりの考え方と、その具体的な結果、そして家庭菜園で生かせるヒントを、専門用語をかみくだきながら解説します。
ポリネーターとは?なぜ減っているの?
ポリネーターとは、植物の花粉を運んで受粉を手伝う動物の総称で、日本語では「送粉者」とも呼ばれます。代表的なのはミツバチやマルハナバチ、野生のハナバチ類で、ほかにもハナアブ、チョウ、ガ、甲虫、さらに地域によっては鳥やコウモリもポリネーターの役割を果たしています。
論文の冒頭では、ポリネーターがなぜ大切なのかが整理されています。受粉は主に昆虫が担う重要な「生態系サービス」(自然が人間にもたらしてくれる恵み)です。受粉によって植物は種子や果実をつくることができ、その結果として、きれいな空気や水、すみか、燃料、食料、医薬品といった、植物に由来する多くの恵みが支えられています。
受粉の仕組みそのものについては、他家結実性とは何か?果樹栽培の収量と品質を左右する「受粉」の秘密や、反対に受粉なしで実をつける植物を扱ったなぜ受粉なしで実るのか?自家結実性植物の生態と農業の未来でも詳しく紹介しています。
ポリネーターが減っている主な原因
論文では、ポリネーター(とくに昆虫)の減少の原因として、次のような点が挙げられています。
- 花資源(蜜や花粉)の減少:畑が1種類の作物だけで占められると、その作物が咲く時期以外は食べ物がなくなる
- 営巣場所の減少:野生のハナバチの多くは土の中や枯れ枝などに巣をつくるため、手つかずの場所が減ると子育てができない
- 生息地の分断:都市開発などで、虫がすめる場所が細切れになる
- 肥料や農薬の過剰な使用:とくに農薬がポリネーターに悪影響を与えることはよく知られている
世界的な状況については、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)が、ポリネーターと受粉、食料生産に関する評価報告書をまとめています。また、国連食糧農業機関(FAO)も受粉とポリネーターの保全に関する情報を公開しています。
モロッコでは受粉の価値はどれくらい?
今回の研究の舞台であるモロッコでは、耕地の50%以上を小麦などの穀物が占めています。穀物は風で受粉する作物なので、農家がポリネーターの危機を意識する機会は少なかったようです。それでも、ポリネーターに頼る作物の生産は数十年にわたって増え続けており、論文によると、モロッコで昆虫の受粉が農業生産にもたらした価値は、2019年に約18.5億ユーロと推定されています。これは同年のモロッコの国内総生産(GDP)の約1.7%にあたる金額です。
ポリネーターは、目立たないところで国の経済まで支えている存在だといえます。

FAP(売れる花を植える農業)とは?野の花の帯とどう違うの?
FAP(Farming with Alternative Pollinators:代替送粉者を活用した農業)とは、主作物の畑のまわりや間に、収穫して売ることのできる植物を植えて、ポリネーターや害虫の天敵のすみか・餌場をつくる農業の方法です。論文では、このために植える植物を「販売可能な生息地改善植物(Marketable Habitat Enhancement Plants:MHEP)」と呼んでいます。この記事では分かりやすく「売れる花」と表現します。
ヨーロッパやアメリカの「野の花の帯」との違い
ポリネーターを守る方法として、ヨーロッパやアメリカでよく知られているのが、畑のふちに野の花(ワイルドフラワー)の種をまいて花の帯をつくる方法です。EUやアメリカでは「農業環境支払い制度」と呼ばれる仕組みがあり、こうした取り組みをした農家に国からお金が支払われます。
しかし、論文によると、モロッコのような低・中所得国では、野の花の帯は農家に敬遠されがちでした。主な理由は次の2つです。
- 野の花の種が畑に広がって、雑草になってしまうのではないかという心配
- 政府からの支払いがないため、収入にならない花のために土地を割く余裕がない
そこで考えられたのがFAPです。FAPで使う植物は、その地域で流通している油糧作物、香辛料、野菜、ベリー類、薬用・香料植物、飼料植物などです。花が咲いている間はポリネーターや天敵の食堂になり、収穫すれば売って収入になります。
両者の違いを表にまとめると、次のようになります。
| 比較項目 | 野の花の帯(ワイルドフラワーストリップ) | FAP(売れる花の帯) |
|---|---|---|
| 植える植物 | 野生の草花 | コリアンダー、ナタネ、ルッコラなど販売できる作物 |
| 植えた植物からの収入 | 基本的になし | 収穫物を売って収入になる |
| 主な支え | 政府からの支払い(EU・米国など) | 農家自身の収入(補助金に依存しない) |
| 農家の心配 | 雑草が広がる不安 | 追加の手間(収穫作業など) |
| 平均的なコスト | ― | 論文によると、FAP圃場とソラマメだけの圃場でほぼ同程度 |
FAPはこれまで、ウズベキスタン、ジンバブエ、北アフリカや中東の国々で試験されてきました。モロッコの小規模農家を対象にした先行研究では、試験終了後も68%の農家が売れる花を使い続けたと報告されており、農家に受け入れられやすい方法であることが示されています。
これまで分かっていなかったこと:畑の大きさ
一方で、これまでのFAPの試験は、主に300 m²ほどの小さな畑で行われてきました。論文では、畑の大きさが農地の生物多様性を左右する大きな要因であり、小さな畑ほど多くのポリネーターや天敵を支えるという先行研究が紹介されています。つまり、「小さな畑でうまくいったFAPが、1 haもある大きな畑でも同じように効くのか」は分かっていなかったのです。
今回の研究は、この疑問に答えるために行われました。

モロッコの研究はどのように行われたの?
この研究は、国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)、ベルギーのモンス大学、モロッコ国立農業研究所(INRA)などの研究チームによって行われました。主作物に選ばれたのはソラマメです。ソラマメはモロッコの農業で重要な作物で、FAOの統計では2013〜2023年の年間平均生産量が92,473トンにのぼります。
研究の4つの目的
論文では、研究の目的が次の4つにまとめられています。
- 小さな畑と大きな畑の2つのスケールで、FAP圃場とソラマメだけの圃場(対照区)を比べ、ポリネーターの数と多様性への影響を測る
- 同じ方法で、害虫とその天敵の数と多様性を比べる
- 小さな畑と大きな畑それぞれで、FAP圃場と対照区の純収入を比べる
- アンケートで、FAPに対する農家の受け止め方を調べる
研究チームの仮説は、「大きな畑でもFAPはポリネーター・天敵・収入を増やすが、その効果は小さな畑より小さくなる」というものでした。受粉や害虫の抑制といった自然の働きは、限られた面積のほうが集中して効率よく働くと考えられているためです。
調査地:乾燥した地域と、やや雨の多い地域
調査は、気候の異なる2つの地域で行われました。
| 項目 | 半乾燥地域(セタット) | 亜湿潤地域(ケニトラ、シディ・スリマーヌ) |
|---|---|---|
| 位置・標高 | 北緯33°付近、標高約600 m | 北緯34°付近、標高約50 m |
| 年間降水量 | 約300〜400 mm | 約400〜450 mm |
| 特徴 | 夏は暑く乾燥。穀物の単一栽培が90%を占め、花が少ない | オレンジなどの果樹や豆類の生産がさかん |
| 大きな畑の試験地 | セタット | シディ・スリマーヌ |
参考までに、日本の年間降水量は多くの地域で1,000〜2,000 mm以上ありますから、モロッコの調査地がいかに乾燥しているかが分かります。
畑の設計:小さな畑と大きな畑
研究では、次の2種類のサイズの畑が用意されました。
| 項目 | 小さな畑 | 大きな畑 |
|---|---|---|
| 面積 | 300 m²(10 m × 30 m) | 1 ha(10,000 m²) |
| 試験年 | 2018〜2019年(2年間) | 2021年(1年間) |
| 畑の数 | 計32か所(各地域・各年でFAP 5か所、対照3か所) | 計14か所(セタットでFAP 5・対照3、シディ・スリマーヌでFAP 3・対照3) |
| ソラマメの面積 | 75% | 93% |
| 売れる花の面積 | 25%(外周1 mの帯) | 7%(幅1 m × 長さ100 mの帯を15.5 m間隔で7本) |
| 使った売れる花 | 1年目10種類、2年目7種類。1つの畑に4〜6種類をモザイク状に配置 | コリアンダーとナタネの2種類のみ |
| 対照区 | 100%ソラマメ | 100%ソラマメ |
小さな畑では、コリアンダー、ナタネ、ルッコラ、チア、アマ、セロリ、ルピナス(2種)、グラスピー、アルファルファなど、さまざまな売れる花が試されました。ただし、花の量が少なかったり、草丈が足りなかったり、花の期間が短かったりした種類は2年目に入れ替えられています。たとえば亜湿潤地域では、農家の意見と地域に合わなかったことから、アルファルファが外されました。
大きな畑では、小さな畑の試験で作物への効果が高かったコリアンダーとナタネの2種類に絞られました。どの畑も点滴かん水で水やりが行われ、別々のポリネーター群集を調べるため、畑同士は少なくとも1 km離されました。
虫の調べ方
ポリネーターの採集は、ソラマメと売れる花が咲いている期間中に、各畑で3回ずつ行われました。晴れて風が弱く、気温が16 °C以上の日の午前10時から午後4時の間に実施されています。方法は主に次の2つです。
- スウィーピング:捕虫網を振って、花に来ている虫をすくい取る方法。決められた帯状の区画(トランセクト)に沿って、一定時間(10分など)採集した
- パントラップ:白・黄色・青色に塗ったお皿に石けん水を入れ、飛んできた虫を捕まえる方法。午前10時に設置し、30時間後に回収した
害虫と天敵は、「たたき落とし法」で調べられました。先端にゴムカバーを付けた棒で1株を10回たたき、落ちてきた虫を集める方法です。集めた虫はすべて専門家に送られ、種類が確認されました。
さらに、収入の計算では、ソラマメのさやの数と重さを1 m²の区画10か所で測って畑全体に換算し、そこに売れる花の収穫物の売り上げを加え、種代や収穫にかかる追加の人件費(1つの畑あたり2人日分、200ディルハム)を差し引いています。ディルハムはモロッコの通貨です。

花の帯で、花が咲いている期間はどれくらい延びたの?
最初に注目したいのは、花の帯によって、畑の中で花が咲いている期間が長くなったことです。
ソラマメだけの畑では、ポリネーターを含む有用な虫が集まるのは、ソラマメが咲いている間だけでした。一方、FAP圃場では、ソラマメより早く咲く花、同じ時期に咲く花、遅れて咲く花がリレーのようにつながり、ソラマメの開花の前後にも虫たちが食べ物を得られる場所になっていました。
| 畑の大きさ | ソラマメだけの畑 | FAP圃場(売れる花あり) | 延びた日数 |
|---|---|---|---|
| 小さな畑(300 m²) | 47.5日 | 75日 | 27.5日(約1.6倍) |
| 大きな畑(1 ha) | 58日 | 64日 | 6日 |
出典:Bencharki et al. (2025) “Insects’ and Farmers’ Responses to Pollinator-Related Habitat Improvement in Small and Large Faba Bean Fields in Morocco.” Insects 16, 1164(本文の数値をもとに作成)
小さな畑では4〜6種類の花を組み合わせたため、花の期間が大きく延びました。大きな畑ではコリアンダーとナタネの2種類だけだったため、延びた日数は6日にとどまっています。
売れる花はいつ咲いたの?
論文の表1には、それぞれの売れる花の開花期間がまとめられています。その一部を抜き出すと、次のとおりです。
| 地域 | 植物 | 開花期間 | 開花日数 |
|---|---|---|---|
| 亜湿潤(大きな畑) | ソラマメ(主作物) | 2月2日〜4月1日 | 58日 |
| 亜湿潤(大きな畑) | コリアンダー | 2月4日〜4月1日 | 56日 |
| 亜湿潤(大きな畑) | ナタネ | 2月1日〜4月5日 | 62日 |
| 亜湿潤(小さな畑) | チア | 2月5日〜4月14日 | 74日 |
| 亜湿潤(小さな畑) | セロリ | 3月23日〜5月14日 | 53日 |
| 亜湿潤(小さな畑) | ルッコラ | 2月8日〜4月12日 | 52日 |
| 半乾燥(大きな畑) | ソラマメ(主作物) | 2月2日〜4月1日 | 58日 |
| 半乾燥(大きな畑) | ナタネ | 2月2日〜4月5日 | 60日 |
| 半乾燥(小さな畑) | アルファルファ | 3月23日〜4月12日 | 20日 |
出典:Bencharki et al. (2025) Insects 16, 1164, Table 1(一部を抜粋し、日本語訳して掲載)
たとえばセロリはソラマメが咲き終わったあとの5月中旬まで咲き続け、チアは74日間という長い期間花を咲かせていました。こうした「遅咲き」や「長咲き」の植物を組み合わせることで、ソラマメの前後にも花が途切れない状態がつくられていたわけです。
モロッコではソラマメは冬から春にかけて咲きますが、日本の家庭菜園でも、秋にまいたソラマメは春(4〜5月ごろ)に花を咲かせます。同じ時期に咲くコリアンダーやナバナ類(アブラナ科)との組み合わせは、日本でも考えやすい組み合わせといえるでしょう。
ポリネーターはどれくらい増えたの?
調査期間中、スウィーピングとパントラップによって、小さな畑と大きな畑をあわせて6,502匹の訪花昆虫が採集・観察されました。対象としたのは、ハナバチ、ハナアブ、カリバチの3つのグループです。
ハナバチはさらに、「舌の長いハナバチ(長舌ハナバチ)」と「舌の短いハナバチ(短舌ハナバチ)」に分けて集計されています。舌の長いハナバチは、ミツバチ科やハキリバチ科の仲間で、花の奥深くにある蜜を吸うのが得意です。舌の短いハナバチは、ヒメハナバチ科やコハナバチ科の仲間で、浅い花を好む傾向があります。花の奥に蜜をためる構造については、花の距(きょ)の正体とは?スミレやツリフネソウに隠された驚きの戦略でも紹介しています。
小さな畑の結果
小さな畑(2018〜2019年)では、合計3,925匹が記録されました。
| 地域 | 虫のグループ | ソラマメだけの畑 | FAP圃場 |
|---|---|---|---|
| 半乾燥(セタット) | 長舌ハナバチ | 47 | 215 |
| 半乾燥(セタット) | 短舌ハナバチ | 225 | 723 |
| 半乾燥(セタット) | ハナアブ | 21 | 102 |
| 半乾燥(セタット) | カリバチ | 139 | 173 |
| 亜湿潤(ケニトラ) | 長舌ハナバチ | 519 | 1,230 |
| 亜湿潤(ケニトラ) | 短舌ハナバチ | 58 | 331 |
| 亜湿潤(ケニトラ) | ハナアブ | 10 | 46 |
| 亜湿潤(ケニトラ) | カリバチ | 16 | 70 |
出典:Bencharki et al. (2025) Insects 16, 1164, Table 2(日本語訳して掲載)
すべてのグループで、FAP圃場のほうが多くの虫が記録されています。統計解析でも、小さな畑では、FAP圃場のほうがポリネーターの数が有意に多く(p < 0.05)、種類の豊富さ(種数)も有意に高い(p < 0.01)という結果でした。「有意」とは、偶然とは考えにくい、統計的に意味のある差があることを表す言葉です。
大きな畑の結果
大きな畑(2021年)では、合計2,577匹が記録されました。
| 地域 | 虫のグループ | ソラマメだけの畑 | FAP圃場 |
|---|---|---|---|
| 半乾燥(セタット) | 長舌ハナバチ | 214 | 622 |
| 半乾燥(セタット) | 短舌ハナバチ | 27 | 104 |
| 半乾燥(セタット) | ハナアブ | 105 | 283 |
| 半乾燥(セタット) | カリバチ | 28 | 54 |
| 亜湿潤(シディ・スリマーヌ) | 長舌ハナバチ | 392 | 473 |
| 亜湿潤(シディ・スリマーヌ) | 短舌ハナバチ | 7 | 97 |
| 亜湿潤(シディ・スリマーヌ) | ハナアブ | 33 | 66 |
| 亜湿潤(シディ・スリマーヌ) | カリバチ | 21 | 51 |
出典:Bencharki et al. (2025) Insects 16, 1164, Table 3(日本語訳して掲載)
大きな畑でも、数えられた虫の数はすべてのグループでFAP圃場のほうが多くなっていました。また、種類の豊富さについても、FAP圃場と対照区の間に統計的に意味のある差(p < 0.05)が認められています。
なお、論文の本文では、大きな畑の個体数の比較について「対照区のほうが有意に多い」と読める記述があり、上の表の数値や考察の内容と食い違っています。記載の誤りの可能性がありますが、この記事では表の実数の紹介にとどめ、大きな畑の個体数の統計的な結論については断定を避けています。
どの花にどんな虫が集まったの?
売れる花ごとに、集まる虫の好みにははっきりとした違いがありました。小さな畑での結果は次のとおりです。
| 虫のグループ | 1番人気 | 2番人気 | 3番人気 |
|---|---|---|---|
| 長舌ハナバチ | ナタネ(78%) | ルッコラ(13%) | コリアンダー(9%) |
| 短舌ハナバチ | ナタネ(49%) | コリアンダー(30%) | ルッコラ(21%) |
| ハナアブ | コリアンダー(53%) | ナタネ(25%) | ルッコラ(22%) |
| カリバチ | コリアンダー(59%) | ナタネ(31%) | アマ(10%) |
出典:Bencharki et al. (2025) Insects 16, 1164(本文の数値をもとに作成)
ハナバチはナタネ(アブラナ科)を、ハナアブやカリバチはコリアンダー(セリ科)を好む傾向が見られます。小さな畑では、売れる花の種類によってポリネーターの種の豊富さにきわめて有意な差(p < 0.001)がありました。一方、大きな畑では、ナタネとコリアンダーに集まった虫がちょうど50%ずつで、種の多様性にも有意な差はありませんでした。
論文の考察では、花の形や蜜の吸いやすさといった「花の形質の多様さ」が、さまざまな虫のグループの要求に合っていたことが、FAPの効果の理由の一つと考えられています。コリアンダーは小さな花が傘のように集まって咲くため、舌の短い虫でも蜜を吸いやすいのが特徴です。コリアンダーの実の特徴については双懸果とは?セリ科植物の果実の特徴・構造・メリットを徹底解説【コリアンダーやクミンの秘密】で、花の形と受粉の関係については「ガーデニング初心者も驚く!サルビアの超効率的な受粉システム」でも取り上げています。
また、論文では、ソラマメを主に訪れるのは長舌ハナバチで、とくにヒゲナガハナバチの仲間(アントフォラ・フルウィタルシス、エウケラ・ニグリラブリス)であると紹介されています。ソラマメの花は奥に蜜があり、花びらを押し広げて入る必要があるため、力と長い舌を持つハナバチが得意な花なのです。コリアンダーやナタネは草丈が0.5〜1 mほどと高く、遠くからも目立つため、こうしたハナバチを畑に呼び込み、結果として主作物のソラマメの受粉にもつながると考えられています。

害虫と天敵はどう変わったの?
FAPのもう一つの狙いは、害虫を食べたり寄生したりする「天敵」を畑に呼び込むことです。天敵とは、テントウムシ、クサカゲロウ、寄生バチ、捕食性のカメムシなど、害虫を食べて数を抑えてくれる生き物のことです。こうした天敵のすみかや餌場になる植物は、日本では「天敵温存植物」や「インセクタリープランツ」とも呼ばれています。ハナアブの仲間には、幼虫がアブラムシを食べる種類も多く、花に来る成虫はポリネーター、幼虫は天敵という「一人二役」をこなしています。
アブラムシの生態や増え方については、アブラムシの生態と発生する原因、対策について紹介で詳しく解説しています。
大きな畑での結果
小さな畑については、これまでの研究で、FAP圃場のほうが害虫の数と種類がはっきり少ないことが示されていました。今回の研究では、新たに大きな畑で害虫と天敵が調べられました。
| 項目 | ソラマメだけの畑(6か所) | FAP圃場(8か所) | 統計的な差 |
|---|---|---|---|
| 害虫の数 | 1,520匹 | 1,202匹 | あり(p < 0.05) |
| 天敵の数 | 16匹 | 272匹 | なし(p > 0.05) |
| 害虫の種類の多様さ | ― | ― | なし(p > 0.05) |
| 天敵の種類の多様さ | ― | ― | なし(p > 0.05) |
出典:Bencharki et al. (2025) Insects 16, 1164(本文の数値をもとに作成)
大きな畑では、害虫の数がFAP圃場で統計的に意味のある形で少なくなっていました。一方、天敵の数は数字の上では16匹から272匹へと大きく増えていますが、畑ごとのばらつきが大きかったためか、統計的に意味のある差とまではいえませんでした。これは、小さな畑では天敵にも有意な差が見られていた先行研究とは異なる結果です。
なぜ天敵の差ははっきりしなかったの?
論文の考察では、次のような点が指摘されています。
- 天敵が畑に住みつき、害虫を抑え始めるまでには時間がかかる
- 生物多様性が畑の働きに与える効果はすぐには現れず、捕食・競争・寄生といった生き物同士の関係を通じて、少しずつ表れることが多い
- 大きな畑の試験は2021年の1年間だけだった
そのため論文では、この手法の有効性を確かめるには、さまざまな農業システムで複数年にわたる試験が不可欠だと述べられています。
また、先行研究では、草地や林などの多様な非作物生息地が天敵の数を最大71%増やしうることや、売れる花を害虫を主作物から遠ざけて別の場所へ誘い込む「プッシュ・プル」の作物として利用できる可能性も紹介されています。論文は、多様な売れる花を植えることが、ソラマメの総合的病害虫管理(IPM:農薬だけに頼らず、複数の方法を組み合わせて病害虫を管理する考え方)の一つとして検討する価値がある、とまとめています。
植物が香りで天敵を呼び寄せる仕組みについては、メチルサリチル酸とは?イネが発する香りのSOSとウイルスの妨害作戦を解説も参考になります。

収入はどれくらい増えたの?
農家にとって最も気になるのは、やはり収入です。研究チームは、ソラマメの売り上げに売れる花の売り上げを加え、種代と追加の人件費を差し引いて、純収入を比べました。
大きな畑(1 ha)の結果
| 地域 | 項目 | ソラマメだけの畑 | FAP圃場 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 半乾燥(セタット) | ソラマメの平均収穫重量(93%区域) | 5,387 kg | 6,972 kg | +29% |
| 半乾燥(セタット) | 93%区域の平均収入 | 16,162 MAD | 20,916 MAD | +29% |
| 半乾燥(セタット) | 7%区域の平均純収入 | 1,257 MAD | 854 MAD | −32% |
| 半乾燥(セタット) | 1 haあたりの平均純収入 | 17,419 MAD | 21,770 MAD | +25% |
| 亜湿潤(シディ・スリマーヌ) | ソラマメの平均収穫重量(93%区域) | 5,026 kg | 7,651 kg | +52% |
| 亜湿潤(シディ・スリマーヌ) | 93%区域の平均収入 | 12,565 MAD | 19,127 MAD | +52% |
| 亜湿潤(シディ・スリマーヌ) | 7%区域の平均純収入 | 1,100 MAD | 965 MAD | −12% |
| 亜湿潤(シディ・スリマーヌ) | 1 haあたりの平均純収入 | 13,666 MAD | 20,092 MAD | +47% |
出典:Bencharki et al. (2025) Insects 16, 1164, Table 5(日本語訳して掲載。MADはモロッコ・ディルハム。7%区域の収入は、FAP圃場では売れる花、対照区ではソラマメによるもの)
両地域をあわせると、FAP圃場の純収入は対照区より36%高く、この差は統計的にも意味のあるものでした(t = 2.24、両側検定 p = 0.04)。
この表で興味深いのは、7%区域だけを比べると、売れる花の売り上げはソラマメを植えた場合より少なかった(−32%、−12%)という点です。それでも畑全体の収入が増えたのは、残り93%のソラマメの収穫量が29〜52%も増えたからです。つまり、FAPの収入増の主な源は、売れる花そのものの売り上げではなく、花の帯がポリネーターを呼び、主作物のソラマメの実りを良くしたことにあると読み取れます。
小さな畑(300 m²)の結果
小さな畑については、先行研究で同様の計算が行われ、両地域で平均108%の収入増が報告されています。
| 年 | 地域 | ソラマメだけの畑の純収入 | FAP圃場の純収入 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 2018 | 半乾燥(セタット) | 338 MAD | 920 MAD | +172% |
| 2019 | 半乾燥(セタット) | 309 MAD | 571 MAD | +85% |
| 2018 | 亜湿潤(ケニトラ) | 763 MAD | 1,612 MAD | +111% |
| 2019 | 亜湿潤(ケニトラ) | 572 MAD | 957 MAD | +67% |
出典:Bencharki et al. (2025) Insects 16, 1164, Table 4(0.03 haあたりの平均純収入を抜粋し、日本語訳して掲載)
小さな畑では、ソラマメの収穫重量も21〜72%増えており、さらに面積の25%を占める売れる花からの収入も加わったことで、収入が大きく伸びました。
収入の増え方をまとめると
| 畑の大きさ | 売れる花の面積 | 純収入の増加 |
|---|---|---|
| 小さな畑(300 m²) | 25% | +108%(約2倍) |
| 大きな畑(1 ha) | 7% | +36%(約1.4倍) |
論文では、売れる花には、洪水などの予期しない出来事で主作物が不作になったときの「保険」になるという利点もあると述べられています。低・中所得国の小規模農家は、生物多様性を守る取り組みへの補助金を受けられないことが多いため、販売できる作物で収入を生み出すFAPは、生物多様性の維持と経済的な安定という2つの目標を両立させる有望な方法だと結論づけられています。
なぜ小さな畑ほど効果が大きいの?
小さな畑の108%に対して、大きな畑は36%。効果の差は研究チームの予想どおりでした。論文や本文の数値から考えられる理由を整理すると、次のようになります。
- 花の帯の割合の違い:小さな畑は面積の25%が花の帯だったのに対し、大きな畑は7%だった
- 花の種類の違い:小さな畑は4〜6種類の花を組み合わせたのに対し、大きな畑は2種類だけだった。その結果、花の期間の延び方も27.5日と6日で大きく違った
- 距離の違い:小さな畑では、畑のどこにいても花の帯まで数メートルしか離れていない。大きな畑では帯同士が15.5 m離れており、虫の行き来がやや少なくなる
- 試験期間の違い:小さな畑は2年間、大きな畑は1年間の試験だった
論文では、先行研究として「畑が小さいほど多くのポリネーターや天敵を支える」「生態系の働きを活かした取り組みの効果は小さな畑ほど高い」という知見が紹介されています。受粉や害虫の抑制といった有益な働きは、限られた面積のほうが集中して効率よく働くためだと考えられています。
裏を返せば、大きな畑でも花の種類を増やしたり、帯の間隔を狭めたりすれば、効果がさらに高まる可能性があります。ただし、これは今回の研究で直接確かめられたことではないため、今後の検証が待たれる点です。
農家はFAPをどう評価したの?
この研究のもう一つの特徴は、実際にFAPを試した農家へのアンケート調査です。2023年2〜3月に、2018〜2021年のFAP研究に参加した46人(小規模農家18人、大規模農家28人)に対面でインタビューが行われました。
農家が評価した点
農家に5つの特性を「高・中・低」で評価してもらった結果は、次のとおりです。
| 評価した項目 | 農家の評価 |
|---|---|
| 主作物の品質が上がる | 多くの農家が「高」 |
| 主作物の生産性が上がる | 一部の農家が「高」(全体として最も優先度の高い利点) |
| 売れる花への投資費用 | 「低」(お金がかからない) |
| 売れる花からの収入 | 「中」 |
| 売れる花の部分の害虫の少なさ | 全員が「中」 |
出典:Bencharki et al. (2025) Insects 16, 1164(本文の内容をもとに作成)
農家は売れる花を、費用のわりに多くの利点をもたらす、費用対効果の高い手段と受け止めていました。試験終了後、研究チームの支援なしではFAPを導入できなかったのは、46人中8人(小規模農家5人、大規模農家3人)だけでした。
「野の花はイヤ、売れる花ならいい」
とくに印象的なのが、次の質問への答えです。
「昆虫を守るために、売れる花の代わりに野の花の種をまく気はありますか?」
この質問には、農家全員が「いいえ」と答えました。一方で、ポリネーターを必要としない作物の畑であっても、売れる花の帯を設けてポリネーターを守り、害虫の抑制にも役立てることには同意しています。
論文の考察では、モロッコの農家がFAPを評価しているのは、生態学的・倫理的な側面ではなく、主に農業面と経済面の利点だと分析されています。そのうえで、自然保護に関わる取り組みは、農家の優先事項に響く形で提案することが大切だとしています。
試験から学んだこと・その後の変化
農家が試験から学んだこと(複数回答)としては、「FAPの植え付け配置で収入を増やす方法が分かった」という答えが最も多く、ほかに「畑でポリネーターを守る役割」「作物の多様化の大切さ(22%)」「ポリネーターの重要性」「植物を守る方法」などが挙がりました。
さらに、次のような変化も報告されています。
- 満足度:小規模農家の89%、大規模農家の57%が満足していた
- 農薬の使用:小規模農家の72%以上、大規模農家の64%が農薬の使用量を減らしたと回答
- 殺虫剤:FAPに取り組む農家の中には、自主的に殺虫剤の使用をやめた人もいた
- 推奨する主作物:FAPで最も推奨された主作物はソラマメ(31%)
- 多年生作物の植え付け:小規模農家の83%、大規模農家の93%が、2 kmごとに畑の一部でサボテン、果樹、オリーブ、薬用植物などの多年生作物を育てる意向を示した(ポリネーターの営巣や子育ての場所になる)
一方で、論文は「満足していることが、そのまま長期的な導入を保証するわけではない」とも指摘しています。モロッコは干ばつが起きやすく、気候変動による水不足にも直面しています。インタビューしたすべての農家がこの課題を認識しており、水不足やインフラの状況が、FAPのような取り組みを広げるうえでの大きな課題であり続けるとされています。
農薬に頼りすぎない害虫対策の考え方については、海洋微生物由来の天然農薬とは?126種の化合物からわかった効果と仕組みでも別の角度から紹介しています。
家庭菜園でポリネーターを呼ぶにはどうすればいい?
今回の研究はモロッコの農地での試験ですが、考え方そのものは家庭菜園にも応用できます。ここでは、論文の結果をもとに、家庭菜園で試しやすい工夫を紹介します。なお、日本とモロッコでは気候も虫の種類も異なるため、論文と同じ効果が得られるとは限らない点にご注意ください。
1. 野菜のそばに「食べられる花」を植える
論文で効果の高かったコリアンダー(パクチー)とナタネ(アブラナ科)は、日本の家庭菜園でも育てやすい植物です。ナタネの代わりに、ナバナやルッコラ、コマツナなど、とう立ちして黄色い花を咲かせるアブラナ科の野菜を利用する方法も考えられます。収穫を終えた株をすぐに抜かず、一部を花が咲くまで残しておくだけでも、ポリネーターの食堂になります。
2. 咲く時期の違う植物を組み合わせる
論文では、4〜6種類の花を組み合わせた小さな畑で、花の期間が47.5日から75日に延びていました。家庭菜園でも、早く咲くもの、主役の野菜と同じ時期に咲くもの、遅れて咲くものを組み合わせると、花が途切れにくくなります。
| 時期の目安(関東の平地) | 花を咲かせやすい植物の例 |
|---|---|
| 3〜4月 | ナバナ、コマツナなどアブラナ科野菜のとう立ち、ルッコラ |
| 4〜5月 | ソラマメ、エンドウ、コリアンダー |
| 5〜6月 | コリアンダー(遅まき)、ディル、カモミール |
| 6月以降 | バジル、シソ、ソバ |
※開花時期は品種・地域・種まきの時期によって変わります。
3. 花の帯は畑の一部でも十分
大きな畑では、面積のわずか7%の花の帯でも、ソラマメの収穫量が増えていました。家庭菜園でも、畑の端の1列や、プランター1〜2個分を花のスペースにするだけで、ポリネーターを呼び込むきっかけになります。
4. 数年続けて様子を見る
論文が指摘しているように、天敵が住みついて効果を発揮するまでには時間がかかります。1シーズンで「効果がない」と判断せず、数年続けて観察することが大切です。
5. 殺虫剤はできるだけ控えめに
ポリネーターや天敵は、殺虫剤の影響を受けやすい生き物です。FAPに取り組んだモロッコの農家の多くが農薬の使用量を減らしていたように、花の帯をつくるなら、殺虫剤の使用は必要最小限にとどめるのが理にかなっています。使う場合は、花が咲いている時間帯や開花中の株への散布を避ける、ラベルの使用方法を守るなど、ポリネーターへの影響に配慮しましょう。

この研究から言えること・言えないことは?
研究結果を正しく受け止めるために、論文から言えることと、まだ言えないことを整理しておきます。
言えること
- モロッコのソラマメ畑では、売れる花の帯を植えることで、小さな畑でも大きな畑でも、花が咲いている期間が延び、ポリネーターの種類の豊富さが増えた
- 大きな畑では害虫の数が少なくなり、純収入は36%増えた(小さな畑では先行研究で108%増)
- 収入増の主な源は、主作物であるソラマメの収穫量の増加だった
- 農家は、野の花の帯は拒んだが、売れる花の帯には前向きだった
まだ言えないこと・注意点
- 大きな畑の試験は2021年の1年間、2地域・14か所のみで、年による天候の違いなどを十分に反映しているとはいえない
- 大きな畑では、天敵の数や多様性に統計的に意味のある差は見られなかった
- 論文の本文には、大きな畑のポリネーターの個体数について、表の数値と食い違って読める記述がある
- 小さな畑と大きな畑は、試験の年、花の種類の数、花の帯の割合などが異なるため、「畑の大きさ」だけの影響を取り出して比べたものではない
- 日本の気候や虫の種類、作物で同じ効果が得られるかは、別途確かめる必要がある
論文自身も結論で、ほかの作物やほかの国、とくに低・中所得国で、大きな畑でのFAPの試験をさらに進めることを呼びかけています。
まとめ
- ポリネーター(送粉者)とは、ハチやハナアブなど、花粉を運んで植物の受粉を助ける生き物のこと。花や巣の場所の減少、農薬などによって減少が心配されている
- FAPとは、主作物のまわりにコリアンダーやナタネなど「売れる花」を植えて、ポリネーターや天敵を支えながら農家の収入にもつなげる方法
- モロッコのソラマメ畑では、FAPによって花の期間が延び(小さな畑で47.5日から75日)、ポリネーターの種類の豊富さが小さな畑・大きな畑とも有意に増えた
- 大きな畑では害虫が1,520匹から1,202匹に減ったが、天敵の差は統計的にははっきりしなかった
- 純収入は小さな畑で108%、大きな畑で36%増加。主な理由はソラマメの収穫量の増加だった
- 農家は「野の花」は拒んだが「売れる花」は歓迎し、多くが農薬の使用量を減らしていた
- 家庭菜園でも、野菜のそばに食べられる花を植え、咲く時期をずらして組み合わせることで、ポリネーターを呼び込む工夫ができる
論文の原文は、Insects誌のオープンアクセス論文(DOI:10.3390/insects16111164)から誰でも読むことができます。
よくある質問(Q&A)
Q1. ポリネーターとミツバチは同じものですか?
同じではありません。ミツバチはポリネーターの代表的な一種ですが、ポリネーターにはマルハナバチや野生のハナバチ、ハナアブ、チョウ、ガ、甲虫なども含まれます。今回の研究でも、ソラマメを主に訪れていたのは、ヒゲナガハナバチの仲間などの野生の長舌ハナバチでした。
Q2. 家庭菜園でソラマメの受粉を助けるには、どんな植物を一緒に植えるとよいですか?
今回の研究では、コリアンダーとナタネの組み合わせが、ポリネーターや天敵を呼び込み、収入も得られる選択肢として評価されていました。日本の家庭菜園であれば、コリアンダー(パクチー)や、ナバナ・ルッコラなど花を咲かせたアブラナ科の野菜が取り入れやすいでしょう。ただし、日本での効果を確かめた研究ではないため、観察しながら試してみるのがおすすめです。
Q3. 花の帯を植えれば、農薬はまったく使わなくてよくなりますか?
そこまでは言えません。今回の研究では、大きな畑で害虫の数が減ったことが報告されていますが、天敵の効果が十分に表れるには時間がかかるとされています。また、1年間の試験結果です。花の帯は、農薬の使用を減らすための「組み合わせの一つ」として考え、病害虫の発生状況を見ながら対策を組み合わせることが大切です。
Q4. 小さな家庭菜園でも効果はありますか?
論文では、300 m²の小さな畑のほうが、1 haの大きな畑よりも、ポリネーターや収入への効果が大きかったと報告されています。有益な働きは狭い範囲のほうが集中しやすいと考えられているためです。家庭菜園の規模で同じ効果が得られるかは確かめられていませんが、花の帯と野菜の距離が近い小さな菜園は、この考え方を試しやすい環境といえます。
参考文献
- Bencharki, Y., Michez, D., Lhomme, P., Reverté Saiz, S., Ihsane, O., Sentil, A., El Abdouni, I., Hamroud, L., Aw-Hassan, A., Smaili, M.C., Rasmont, P. & Christmann, S. (2025). Insects’ and Farmers’ Responses to Pollinator-Related Habitat Improvement in Small and Large Faba Bean Fields in Morocco. Insects, 16(11), 1164. https://doi.org/10.3390/insects16111164
- IPBES (2016). The assessment report on pollinators, pollination and food production. https://www.ipbes.net/assessment-reports/pollinators
- FAO. Pollination / Pollinator conservation. https://www.fao.org/pollination/en/
- International Center for Agricultural Research in the Dry Areas (ICARDA). https://www.icarda.org/


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