庭や畑のイチビの生態や特徴、駆除方法・予防対策|種子が数十年残る外来雑草を増やさないコツ

夏の畑のふちに背高く伸びたイチビの株と、ビロードのような大きなハート形の葉、橙黄色の小さな花

夏の畑や空き地で、人の背丈ほどに伸び、ハート形の大きな葉をつける雑草、イチビ。結論から言うと、イチビはアオイ科の外来雑草で、大きな株では1株で1万粒を超える種子を落とし、その硬い種子が土の中で数十年生き残ることもあるため、「一度入り込むと毎年出てくる」タイプの雑草です。対策のいちばんのポイントは、花が咲いてから種子ができるまでの短い期間に株を取り除き、「種子を落とさせない」ことです。

この記事では、日本雑草学会や農研機構、国立環境研究所の解説、アメリカの大学・農業研究機関の資料をもとに、イチビの見分け方から、種子の性質、駆除方法、堆肥から持ち込まないための注意点、来年に向けた予防までを順番に解説します。

  1. イチビとは?
  2. イチビはどんな姿をしている?(芽生え・成長した株・花と実・見分け方)
    1. 芽生え(子葉〜本葉2〜3枚のころ)
    2. 成長した株
    3. 花と実
    4. 「作物型」と「雑草型」がある
  3. イチビはどこから来たの?(原産・繊維作物・飼料への混入)
  4. イチビはどうやって増えるの?(種子の数・硬い種皮・寿命)
    1. 1株から落ちる種子の数
    2. 硬い種皮で「眠る」種子
    3. 土の中で数十年も生き残る
    4. 熱にも強い種子
  5. イチビが芽を出しやすいのはどんな条件?
    1. 春の半ばを中心に、夏の間もだらだらと芽を出す
    2. 芽を出せるのは、地表から数cmまで
  6. なぜイチビは厄介な雑草なの?
    1. 理由1:背が高くなり、作物の日当たりを奪う
    2. 理由2:肥料によく反応して大きくなる
    3. 理由3:茎が硬くなり、収穫作業のじゃまになる
    4. 理由4:においが飼料や牛乳の風味を損なう
    5. 理由5:ほかの植物の生育を妨げる物質を出す
    6. 理由6:葉を食べられても、ほとんど弱らない
  7. 駆除方法①:手で抜くならいつ・どうやる?
    1. 抜くなら「本葉が数枚のうち」
    2. 花が咲いたら「2週間」が勝負
    3. 実がついた株は「持ち出す」
  8. 駆除方法②:刈り取りだけで防げる?
  9. 駆除方法③:マルチや防草シートで防げる?
    1. マルチで光をさえぎる
    2. ライムギを地表に残すと抑えられた例も
    3. 太陽熱消毒は、イチビにはあまり効かない
  10. 駆除方法④:耕し方でイチビは減らせる?
    1. 深く耕して埋めても、種子は死なない
    2. 芽が出た直後に、土の表面を浅くかき混ぜる
    3. 種子を落とした年の秋は、耕すのを控える
    4. 「偽の種まき床」で先に芽を出させる
  11. 駆除方法⑤:除草剤を使うときの注意点は?
    1. 除草剤の2つのタイプ
    2. 畑で使われている除草剤の例
    3. 除草剤を使うときに守りたいこと
  12. 堆肥からイチビを持ち込まないためには?
  13. 来年のイチビを減らすには?(種子・肥料・作付け・片付け)
    1. 1. とにかく種子を落とさせない
    2. 2. 肥料や堆肥の入れすぎに注意する
    3. 3. 日陰をつくってイチビの成長を抑える
    4. 4. 作付けの時期や種類を変える
    5. 5. 秋の片付けで種子を残さない
  14. いつ何をすればいい?季節ごとの対策カレンダー
  15. 畑・家庭菜園で気をつけることは?
    1. 見慣れない雑草は「葉をさわって確かめる」
    2. ほかの夏雑草と一緒に対策する
    3. 空き地や河川敷から入り込むこともある
  16. よくある質問(Q&A)
    1. Q1. イチビは根を残すと、また生えてきますか?
    2. Q2. イチビの駆除に最適な時期はいつですか?
    3. Q3. 深く耕せば、イチビの種子はなくなりますか?
    4. Q4. 太陽熱消毒でイチビの種子は死にますか?
  17. まとめ:イチビ対策の要点
  18. 参考文献

イチビとは?

イチビとは、アオイ科イチビ属の一年草で、夏から秋にかけて畑や空き地、河川敷などに生える外来雑草です。学名はアブチロン・テオフラスティ(Abutilon theophrasti)、英語ではその葉の手ざわりから「ベルベットリーフ(velvetleaf)」と呼ばれています。

イチビの基本情報を表にまとめると、次のとおりです。

項目内容
分類アオイ科イチビ属
生活のしかた一年草(夏に育ち、冬の霜で枯れる)
原産地インド(日本雑草学会の解説では、インドまたは中国)
日本での定着1905年に定着が確認されている
草丈50〜200cm(条件がよいと、さらに高くなることもある)
花の時期夏から秋
増え方種子のみ(地下茎などでは増えない)
分布ほぼ全国の飼料畑、畑地、河川敷、空き地など

出典:農研機構 畜産研究部門「写真で見る外来雑草:イチビ」、国立環境研究所「侵入生物データベース:イチビ」、日本雑草学会「雑草の解説:イチビ」をもとに作成

イチビは、一年草なので冬には枯れます。多年草のように根が残って翌年また生えてくるわけではなく、翌年のイチビは、すべて前の年までに落ちた種子から生えてきます。つまり、イチビ対策とは「種子との戦い」だと言いかえることができます。

国立環境研究所の侵入生物データベースでは、イチビは「日本の侵略的外来種ワースト100」に選ばれた植物として紹介されています。畑の作物だけでなく、在来の植物や牧草とも競合する、影響の大きい外来植物として扱われているのです。

イチビはどんな姿をしている?(芽生え・成長した株・花と実・見分け方)

イチビは、成長した株を一度見れば忘れにくい、特徴の多い植物です。ただ、芽生えのころは見落としやすいため、若い段階の姿も知っておくと早めに対処できます。

芽生え(子葉〜本葉2〜3枚のころ)

コーネル大学の雑草図鑑によると、イチビの芽生えには次のような特徴があります。

  • 子葉(最初に出る2枚の葉)は長さ0.3〜1.3cmほどで、1枚は丸く、もう1枚はハート形になっていることが多い
  • 子葉も茎も、やわらかい毛におおわれている
  • 茎の根元が暗い赤色になることがある
  • 最初の本葉はハート形で毛が多く、先がとがり、少し下向きにつく

2枚の子葉の形がそろっていない点は、芽生えを見分けるときのよい手がかりになります。

湿った畑の土から出てきたイチビの芽生えと、丸い子葉とハート形の子葉、細かな毛におおわれた最初の本葉

成長した株

成長したイチビには、次のような特徴があります。

部分特徴
茎まっすぐに立ち、上のほうで枝分かれする。毛が多く、育つと木のように硬くなる
葉互い違いにつくハート形の大きな葉。長さ8〜10cmほどで長い柄があり、両面に短い毛が密生してビロードのような手ざわり。縁には細かいぎざぎざがある
におい葉や茎をもむと、独特の不快なにおいがする
根白い主根が浅めに伸び、枝分かれする

出典:農研機構「写真で見る外来雑草:イチビ」、日本雑草学会「雑草の解説:イチビ」、Cornell University「Weed Identification: Velvetleaf」、SARE「Velvetleaf」をもとに作成

いちばんわかりやすい見分け方は、葉をさわってみることです。やわらかい毛が密生した、ベルベットのような手ざわりがあれば、イチビの可能性が高いでしょう。あわせて葉をもんでみて、独特のにおいがするかどうかも確かめてみてください。

花と実

イチビは、夏から秋にかけて、葉のつけ根に直径1.5〜2cmほどの橙黄色(オレンジがかった黄色)の花を咲かせます。花びらは5枚です。花は咲いたその日のうちに受粉し、主に自分の花粉で実をつけます。

花のあとにできる実は、イチビのいちばんの特徴です。

  • 直径2cm前後の半球形で、袋状の小部屋(分果)が輪のように並ぶ
  • 小部屋の先には、2本の角のような突起がある
  • 1つの実は9〜15の小部屋からなり、小部屋の中に種子が入っている
  • 種子は直径3mmほどで、灰褐色〜褐色のハート形(腎臓形)

王冠や歯車のようにも見える独特の実の形は、枯れたあとも株に残るため、秋から冬にかけてイチビを見分ける手がかりにもなります。

秋の畑で茎に残った、王冠のような形をしたイチビの実と、先端の角のような突起、中からのぞく小さな黒い種子

「作物型」と「雑草型」がある

日本雑草学会の解説によると、イチビには「作物型」と「雑草型」と呼ばれる2つのタイプがあります。

タイプ実の色由来
作物型黄白色日本でかつて繊維をとるために栽培されていたタイプ
雑草型黒色輸入穀物などに混ざって入ってきたタイプ

出典:日本雑草学会「雑草の解説:イチビ」をもとに作成

現在、畑で問題になっているのは主に雑草型です。

イチビはどこから来たの?(原産・繊維作物・飼料への混入)

イチビは、日本に2つのルートで入ってきたと考えられています。

1つ目は、繊維をとる作物としての導入です。イチビの茎の皮には丈夫な繊維があり、日本でも古くから、繊維をとるために栽培されていました。

2つ目は、意図しない持ち込みです。国立環境研究所や農研機構の資料によると、海外から大量に輸入される飼料用の穀物などにイチビの種子が混ざり、それが日本各地に広がったとみられています。

日本雑草学会の解説では、畑への主な持ち込みルートとして「家畜のふんに混ざった種子」が挙げられています。輸入飼料に混ざった種子を家畜が食べ、ふんと一緒に出た種子が堆肥を通じて畑にまかれる、という流れです。そのため、イチビは飼料用のトウモロコシやソルガム(家畜のえさにするイネ科の作物)の畑で特に問題となり、しばしば高い密度で発生します。

家庭菜園に突然イチビが生えてきた場合も、どこかから持ち込まれた種子が原因になっている可能性があります。持ち込みを防ぐ方法は、後の「堆肥からイチビを持ち込まないためには?」で詳しく解説します。

なお、イチビと同じアオイ科には、綿をとるワタや、庭で育てられるアオイの仲間も含まれます。ワタも繊維をとるために栽培されてきた植物で、その生き残りの工夫はワタの生存戦略を紹介した記事で、アオイの仲間の特徴はアオイの仕組みを解説した記事で紹介しています。

イチビはどうやって増えるの?(種子の数・硬い種皮・寿命)

イチビが厄介なのは、種子の「数」と「しぶとさ」の両方を兼ね備えているからです。ここでは、アメリカの持続可能な農業研究・教育プログラム(SARE)がまとめた雑草管理の手引き「Manage Weeds On Your Farm:Velvetleaf(英語)」の数値を中心に紹介します。

1株から落ちる種子の数

条件1株あたりの種子の数
作物などと競合している場合(よくある数)約1,000粒
トウモロコシ畑でも条件がよい場合1,000〜2,000粒
周りに競合する植物がない場合10,000〜17,000粒

出典:SARE「Manage Weeds On Your Farm:Velvetleaf」をもとに作成

1株につく実の数は70〜200個ほどで、1つの実には15〜45粒(平均35〜45粒)の種子が入っています。種子1粒の重さは6〜12mg(多くは9mg前後)と、雑草の種子としては大きめです。

周りに何もない空き地や、野菜を片付けたあとの畑でイチビが1株育つと、それだけで1万粒を超える種子が落ちる可能性があるということです。

硬い種皮で「眠る」種子

イチビの種子の多くは、水を通しにくい硬い皮(種皮)に包まれた「硬実(こうじつ)」です。硬実は、条件がそろっても水を吸えないため、すぐには芽を出しません。種皮が土の中で少しずつ傷んで水を通すようになると、ようやく芽を出せるようになります。

落ちたばかりの種子のうち、硬実の割合は集団によって3〜62%と大きく異なります。一部はすぐに芽を出し、残りは何年もかけて少しずつ芽を出す。この「時間差の発芽」によって、イチビは毎年のように同じ場所に現れます。

土の中で数十年も生き残る

イチビの種子は、土の中で数十年にわたって生き残ることがあります。コーネル大学の雑草図鑑では、最長で50年ほど土の中に残りうると紹介されています。

ただし、すべての種子が同じように長生きするわけではありません。SAREの資料では、種子が1年間に死ぬ割合について、次のような観察結果が紹介されています。

条件1年あたりに死ぬ種子の割合
耕さない土11〜17%
耕す土32〜53%
地表にある種子55%
深さ約15cmに埋まった種子3%

出典:SARE「Manage Weeds On Your Farm:Velvetleaf」をもとに作成

地表にある種子は、乾燥や温度変化、動物に食べられることなどで死にやすい一方、深く埋まった種子はほとんど死なずに生き残ります。「深く埋めれば、種子が消える」わけではないことがわかります。

また、地表に落ちた種子は、冬の間にネズミなどに31〜99%も食べられたという報告もあります。オサムシの仲間、ナメクジ、ヨトウムシの仲間なども、落ちた種子を食べてくれる「味方」です。

熱にも強い種子

イチビの種子は、熱にも非常に強いことがわかっています。日本の研究(西田ほか、1999年)で、畑の雑草10種の種子を加熱したところ、次のような結果になりました。

加熱の条件イチビ以外の9種イチビ
55℃72時間ですべて死滅すべて死滅するのに120時間かかった
60℃24時間ですべて死滅すべて死滅するのに30時間かかった

出典:西田智子ほか「畑雑草種子の生存に及ぼす加熱時間の影響」雑草研究 44(1): 59–66(1999)をもとに作成

イチビの種子の90%が死ぬまでの時間は、55℃で42〜58時間、60℃で10〜17時間と計算されています。ほかの雑草よりもはるかに熱に強いことがわかります。この性質は、後で紹介する「堆肥の発酵」や「太陽熱消毒」の効き方に大きく関わってきます。

土の断面の中にイチビの種子がいろいろな深さで眠っていて、地表近くの種子だけが芽を出している様子を示した図解イラスト

イチビが芽を出しやすいのはどんな条件?

春の半ばを中心に、夏の間もだらだらと芽を出す

SAREの資料によると、イチビの芽生えが多いのは春の半ばで、その後も生育期間を通じてぽつぽつと芽を出し続けます。日本では、国立環境研究所のデータベースで、花や実をつける繁殖期が6〜10月とされており、春から初夏に芽を出した株が夏から秋に花を咲かせます。

発芽に適した温度は24〜30℃ほどで、8℃を下回る低温や、35℃を超える高温では発芽がにぶくなります。

芽を出せるのは、地表から数cmまで

イチビの種子が芽を出しやすい深さは、次のとおりです。

種子の深さ芽の出やすさ
地表(土をかぶっていない)出にくい
1.3〜2.5cm最も出やすい
5〜7.5cmまで出ることもある(ばらつきが大きい)
7.5cmより深いほとんど出られない

出典:SARE「Manage Weeds On Your Farm:Velvetleaf」をもとに作成

イチビは種子が大きく、栄養をたくさん蓄えているため、小さな種子の雑草よりも深いところから芽を出せます。一方で、地表に転がっているだけの種子は芽を出しにくく、土と密着していることが発芽の条件になります。

また、土の中に長く埋まっていた種子は、光が当たることで発芽が促されます。耕したあとに雑草が一斉に生えてくるのは、埋まっていた種子が地表近くに持ち上げられ、光を受けて目を覚ますためです。

なぜイチビは厄介な雑草なの?

理由1:背が高くなり、作物の日当たりを奪う

イチビは、条件がよいと2m近く、ときにはそれ以上に育ちます。大きな葉を広げて作物の上をおおい、日当たりを奪ってしまいます。日本雑草学会は、イチビを「夏畑作の強害雑草」と位置づけています。

理由2:肥料によく反応して大きくなる

SAREの資料によると、イチビは窒素肥料や家畜ふんの堆肥に非常によく反応し、肥料が多いほど大きく育ち、種子の数も増えます。家畜ふんの堆肥を多く入れた条件では、種子の数が2倍以上になったという試験結果もあります。栄養たっぷりの畑は、イチビにとっても居心地のよい場所なのです。

理由3:茎が硬くなり、収穫作業のじゃまになる

イチビの茎は、育つと木のように硬くなります。そのため、畑では収穫機械に絡んだり、作業のじゃまになったりします。

理由4:においが飼料や牛乳の風味を損なう

イチビには独特のにおいがあります。日本雑草学会の解説によると、飼料用トウモロコシのサイレージ(発酵させた家畜のえさ)にイチビが混ざると、家畜が食べたがらなくなります。国立環境研究所のデータベースでは、飼料に混ざると牛乳に異常な風味がつくことも紹介されています。

理由5:ほかの植物の生育を妨げる物質を出す

国立環境研究所のデータベースでは、イチビの影響として、在来種や作物、牧草との競合に加えて「アレロパシー」も挙げられています。アレロパシーとは、植物が出す物質が、周りの植物の発芽や生育を妨げる現象のことです。そのしくみはアレロパシーを解説した記事で詳しく紹介しています。

理由6:葉を食べられても、ほとんど弱らない

SAREの資料によると、芽生えから6週間後に葉の75%を取り除いても、イチビの種子の生産はほとんど変わりませんでした。多少の被害ではびくともしないしぶとさも、イチビの特徴です。

駆除方法①:手で抜くならいつ・どうやる?

抜くなら「本葉が数枚のうち」

イチビは根が浅めで、若いうちは手で簡単に抜くことができます。本葉が数枚のうちに、根ごと引き抜きましょう。土が湿っているときのほうが、根が切れずにきれいに抜けます。

大きく育つと茎が硬くなり、抜くのに力が必要になります。その場合は、根元を鎌で切るか、スコップで根ごと掘り上げます。

花が咲いたら「2週間」が勝負

イチビの駆除で最も大切なのは、種子ができる前に取り除くことです。SAREの資料によると、イチビは花が咲いてからおよそ12〜15日で、発芽できる種子ができはじめます。さらに、花が咲いてから18〜23日ほどで種子が落ちはじめます。

時期の目安イチビの状態するべきこと
芽生え〜本葉数枚根が浅く、抜きやすい見つけしだい根ごと抜く
花が咲く前茎が硬くなりはじめる根元から切る・掘り上げる
花が咲いてから2週間以内種子はまだ未熟なことが多い急いで取り除く
花が咲いてから2週間以降発芽できる種子ができはじめる実ごと持ち出して処分する

出典:SARE「Manage Weeds On Your Farm:Velvetleaf」をもとに作成(日数は北米での観察にもとづく目安)

春に芽を出した株は、芽生えから花が咲くまでに11〜12週間ほどかかると報告されています。つまり、春先に芽を出したイチビは、夏の盛りに花を咲かせ、その2週間後には種子をつくりはじめる計算です。花を見つけたら「残り2週間」と考えて、早めに対処しましょう。

実がついた株は「持ち出す」

実がついた株を抜いたり刈ったりした場合は、その場に置いたままにしないことが大切です。未熟に見える実でも、置いておくうちに種子が熟して落ちることがあります。実のついた株はビニール袋などに入れて畑の外に持ち出し、自治体のルールに従って処分しましょう。

駆除方法②:刈り取りだけで防げる?

草刈り機や鎌で刈り取る方法は、広い場所では手軽です。ただし、刈り取りだけでイチビを抑え込むのは難しいとされています。

SAREの資料では、イチビは刈り取りなどで葉や茎を失っても再び伸びる力があるため、刈り取りの効果は限られると説明されています。低い位置から脇芽が伸びて、背の低い株のまま花を咲かせることもあります。

刈り取りでイチビを管理する場合は、次の点を意識しましょう。

  • できるだけ地際の低い位置で刈る
  • 1回で終わりにせず、再び伸びてきたら花が咲く前に何度か刈る
  • 花や実がついたあとに刈った場合は、刈った株を持ち出す
  • 最終的には、根元から抜く・掘り上げる方法と組み合わせる

駆除方法③:マルチや防草シートで防げる?

マルチで光をさえぎる

イチビの種子は、土の表面近くで光や温度の変化を受けて芽を出します。ポリマルチや防草シートで地面をおおうと、芽を出しても光が届かず、育つことができません。畑では、野菜の株元を黒いポリマルチでおおうのが手軽な方法です。

ただし、イチビは種子が大きく、芽生えの力が強い雑草です。マルチの植え穴や、シートのつなぎ目、端のすき間からは芽を出してくるため、こまめに見回って抜くことが必要です。

ライムギを地表に残すと抑えられた例も

SAREの資料では、ライムギなどのカバークロップ(地面をおおうために育てる作物)を育て、刈った茎葉を土に混ぜ込まずに地表に残しておくと、土に混ぜ込んだ場合よりもイチビが抑えられたと紹介されています。刈った草の層が地面をおおい、光をさえぎるためと考えられます。緑肥やカバークロップの選び方は、緑肥作物の効果と選び方を紹介した記事を参考にしてください。

太陽熱消毒は、イチビにはあまり効かない

透明なビニールで土をおおい、夏の日差しで土の温度を上げて雑草の種子を死なせる「太陽熱消毒」は、多くの雑草に使える方法です。ところが、イチビの種子は熱に非常に強いため、SAREの資料でもコーネル大学の雑草図鑑でも、太陽熱消毒の効果は小さいとされています。

先に紹介した日本の研究でも、イチビの種子をすべて死なせるには55℃で120時間、60℃でも30時間の加熱が必要でした。家庭菜園の太陽熱消毒で、土の中の温度がこれだけ長く保たれることはあまりありません。イチビが多い畑では、太陽熱消毒だけに頼らず、ほかの方法と組み合わせましょう。

駆除方法④:耕し方でイチビは減らせる?

深く耕して埋めても、種子は死なない

深く耕すと、地表にあった種子は芽を出せない深さに埋められます。SAREの資料でも、プラウ(すき)で深く耕すと、地表の種子の多くを芽を出せない深さに送り込めると説明されています。

ただし、先に紹介したとおり、深さ15cmほどに埋まった種子は1年に3%程度しか死にません。深く埋めた種子は、何年も生き残ったまま眠り続け、次に深く耕したときに再び地表近くに戻ってきます。深耕は、その年のイチビを減らすには役立ちますが、種子そのものを減らす方法ではないことを覚えておきましょう。

芽が出た直後に、土の表面を浅くかき混ぜる

芽を出したばかりの若いイチビは、土の表面を浅くかき混ぜるだけで枯らすことができます。SAREの資料では、芽が白い糸のように地中を伸びている段階(地表に出る直前〜直後)に、表面を浅く削る除草が効果的だとされています。

ただし、イチビは種子が大きく、芽の力が強いため、ごく浅く削るだけの道具では、それより深いところから伸びてくる芽を取りこぼしやすいという注意点もあります。少し大きくなった芽生えは、株元で根を切るように削るのが確実です。

種子を落とした年の秋は、耕すのを控える

SAREの資料では、イチビが大量に種子を落とした年は、秋に耕すのを控えることがすすめられています。地表に種子を残しておけば、冬の間にネズミや虫に食べられたり、乾燥で傷んだりして、種子が減っていくためです。すぐに耕して土の中に埋めてしまうと、かえって種子を長く生き残らせることになります。

「偽の種まき床」で先に芽を出させる

野菜の種をまく前に、畑を耕して土をならし、1〜2週間ほど置いてイチビなどの雑草に先に芽を出させてから、浅く削って枯らす方法があります。「偽の種まき床(フォールス・シードベッド)」と呼ばれる方法です。SAREの資料でも、イチビの芽生えは春に多いため、植え付けを少し遅らせて、その間に出た芽生えを耕して枯らすと、作物の中のイチビを減らせるとされています。

野菜の畝の間で、除草用のホーを使って土の表面を浅く削り、小さな雑草の芽生えを取り除いている様子

駆除方法⑤:除草剤を使うときの注意点は?

除草剤の2つのタイプ

除草剤には、大きく分けて次の2つのタイプがあります。

タイプ使い方特徴
土壌処理剤雑草が芽を出す前に、土の表面にまく土の表面に薬の層をつくり、芽生えを枯らす。すでに大きく育った雑草には効きにくい
茎葉処理剤生えている雑草の葉や茎にかける葉から吸収されて枯らす。雑草が小さいうちほど効きやすい

茎葉処理剤には、かかった植物をほぼすべて枯らす「非選択性」のものと、特定の種類の雑草だけを枯らし、作物や芝には影響しにくい「選択性」のものがあります。グリホサートを含む除草剤は、非選択性の代表です。野菜や庭木にかかると一緒に枯れてしまうため、畑の中では使い方に十分な注意が必要です。

畑で使われている除草剤の例

日本雑草学会の解説では、農業の現場でイチビに有効な除草剤として、次のようなものが紹介されています。

作物成分名使い方の例
トウモロコシ・ソルガムアトラジン種まき後、雑草の2〜4葉期まで土壌処理
トウモロコシハロスルフロンメチル雑草の2〜5葉期、トウモロコシの3〜5葉期に茎葉散布など
複数の作物ベンタゾン茎葉処理
ダイズフルチアセットメチルダイズの2葉期〜開花期に使用できる

出典:日本雑草学会「雑草の解説:イチビ」をもとに作成

これらは主に農家向けの農薬で、作物ごとに使える時期や量が細かく決められています。紹介した成分を含む製品であっても、製品によって登録されている作物や使い方は異なります。使う前には、必ず製品のラベルと、農林水産省の「農薬登録情報提供システム」で、使いたい作物や場所に登録があるかを確認してください。

除草剤を使うときに守りたいこと

  • 雑草が小さいうちに使う:イチビは大きくなると茎が硬くなり、薬が効きにくくなる。表の例でも、多くは2〜5葉期までの使用
  • 使える場所を確認する:「農耕地用」と「非農耕地用」は別物。家庭菜園や畑には、農耕地用として登録のある製品だけを使う
  • 野菜にかけない:非選択性の除草剤は、野菜にかかると一緒に枯れる。風のない日に、ノズルを低くして散布する
  • 花や実がついた株は抜いて持ち出す:除草剤で枯らしても、すでにできた種子が落ちることがある
  • 作用の違う薬を組み合わせる:同じ成分ばかり使い続けると、効きにくい雑草が増えるおそれがあるため、作用のしかたの違う除草剤を使い分ける

堆肥からイチビを持ち込まないためには?

イチビ対策で見落とされがちなのが、堆肥からの持ち込みです。日本雑草学会の解説によると、イチビの種子は主に家畜のふんに混ざって畑に持ち込まれます。輸入飼料に混ざった種子が家畜の体を通り、ふんとともに堆肥になり、その堆肥が畑にまかれるという流れです。

ここで問題になるのが、イチビの種子の熱への強さです。堆肥は、微生物が有機物を分解するときに出る熱で高温になり、その熱で雑草の種子や病原菌の多くが死にます。ところが、先に紹介した日本の研究では、イチビの種子をすべて死なせるには、60℃で30時間、55℃では120時間の加熱が必要でした。

堆肥の温度ほかの畑雑草9種の種子イチビの種子
60℃24時間で全滅30時間で全滅(90%が死ぬのは10〜17時間)
55℃72時間で全滅120時間で全滅(90%が死ぬのは42〜58時間)

出典:西田智子ほか「畑雑草種子の生存に及ぼす加熱時間の影響」雑草研究 44(1): 59–66(1999)をもとに作成

堆肥の山は、中心は高温になっても、表面や端の部分は温度が上がりにくいものです。発酵が不十分な堆肥や、十分に切り返し(全体をかき混ぜて空気を入れ、発酵ムラをなくす作業)がされていない堆肥では、イチビの種子が生きたまま残っている可能性があります。

家庭菜園で家畜ふんの堆肥を使う場合は、次の点に気をつけましょう。

  • 十分に発酵させた「完熟堆肥」を選ぶ
  • 自分で堆肥をつくる場合は、高い温度がしっかり続くように、こまめに切り返す
  • 堆肥を入れた場所から、見慣れないハート形の葉の雑草が出てきたら、早めに抜く
  • 花や実をつけたイチビの株を、堆肥の材料にしない
朝の冷えた空気の中で湯気を立てる、よく切り返された黒褐色の堆肥の山と、突き立てられたフォーク

来年のイチビを減らすには?(種子・肥料・作付け・片付け)

1. とにかく種子を落とさせない

イチビ対策の基本は、何よりも「今年、種子を落とさせない」ことです。種子が1株から1,000〜1万粒以上落ち、数十年生き残ることを考えると、1株を見逃すだけで、何年分もの手間が増えることになります。反対に、種子を落とさせない年を何年か続ければ、土の中の種子は少しずつ減っていきます。

2. 肥料や堆肥の入れすぎに注意する

イチビは肥料によく反応して大きくなり、種子の数も増えます。野菜に必要な量を守り、必要以上に肥料や堆肥を入れないことも、イチビを大きくさせない工夫になります。

3. 日陰をつくってイチビの成長を抑える

SAREの資料によると、光を30%さえぎった程度ではイチビの成長はわずかしか落ちませんが、76%さえぎると、株の重さと種子の数が88%以上も減りました。野菜が早く大きく育って地面をおおえば、あとから芽を出したイチビは日陰になり、育ちにくくなります。株間を適切にとって元気な苗を植え、野菜を早く茂らせることも、立派な雑草対策です。

野菜の間に別の作物を植えて地面をおおう方法については、間作の効果を解説した記事も参考にしてください。

夏の家庭菜園で、葉を広げた野菜が密に茂り、足元の地面がすっかり日陰になって雑草がほとんど生えていない様子

4. 作付けの時期や種類を変える

SAREの資料によると、イチビが問題になりやすいのは、トウモロコシやダイズのように、春に植えて秋まで長く畑にある作物です。次のような工夫で、イチビの生活のリズムを崩すことができます。

  • 秋まき・春まきの麦類やエンドウなど、早い時期に収穫する作物をはさむ(イチビが種子をつくる前に畑を片付けられる)
  • 夏に植える作物に切り替え、植え付け前に春に芽を出したイチビを耕して枯らす
  • 同じ作物を続けず、作付けの時期が違う作物を組み合わせる

5. 秋の片付けで種子を残さない

霜が降りるとイチビは枯れますが、枯れた株にも実が残り、中の種子が少しずつこぼれ落ちます。秋の片付けのときは、実のついた枯れ株を抜いて持ち出しましょう。すでに種子が落ちてしまった場所は、先に紹介したように、すぐには耕さず、冬の間に地表の種子を動物に食べてもらうのも一つの考え方です。

いつ何をすればいい?季節ごとの対策カレンダー

時期イチビの状態するべきこと
早春(植え付け前)土の中で種子が眠っている完熟堆肥を選ぶ。偽の種まき床で先に芽を出させて枯らす
春〜初夏芽生えが多い時期芽が出た直後に土の表面を浅く削る。本葉数枚のうちに抜く。マルチで地面をおおう
夏背が伸び、花が咲きはじめる花を見つけたら2週間以内に根元から取り除く。刈る場合は何度か繰り返す
夏の終わり〜秋実ができ、種子が落ちはじめる実のついた株は袋に入れて持ち出す
晩秋〜冬霜で枯れる枯れ株と実を片付ける。種子が落ちた場所はすぐに耕さない

※時期は目安です。地域やその年の気温によって前後します。

畑・家庭菜園で気をつけることは?

見慣れない雑草は「葉をさわって確かめる」

家庭菜園では、堆肥や苗の土、農機具についた土などから、ある年に突然イチビが生えてくることがあります。ハート形の大きな葉を見つけたら、葉をさわってビロードのような手ざわりがあるか、もむと独特のにおいがするかを確かめてみてください。イチビだとわかったら、花が咲く前に抜いてしまうのがいちばんです。

ほかの夏雑草と一緒に対策する

イチビが生える畑には、ほかの夏雑草も一緒に生えていることが多いものです。種子を落とさせない、地面をおおう、耕し方を工夫するといった考え方は、ほかの夏雑草にも共通します。

庭の芝生や花壇まわりの雑草対策としては、セイヨウタンポポの駆除方法もあわせてご覧ください。

空き地や河川敷から入り込むこともある

イチビは、河川敷や道ばた、空き地などでも生えます。畑のまわりにイチビが生えていると、そこから種子が持ち込まれることがあります。自分の管理できる範囲であれば、畑のまわりのイチビも、種子をつける前に取り除いておきましょう。

よくある質問(Q&A)

Q1. イチビは根を残すと、また生えてきますか?

A. イチビは一年草で、地下茎などでは増えません。根が少し残っても、そこから翌年また生えてくることはありません。ただし、地際で刈っただけの株は、残った茎から脇芽を伸ばして再び花を咲かせることがあります。できるだけ根ごと抜き、翌年に生えてくるイチビは「前の年までに落ちた種子から出たもの」と考えて、種子を落とさせない対策を続けましょう。

Q2. イチビの駆除に最適な時期はいつですか?

A. 最も効果的なのは、本葉が数枚の若いうちです。根が浅く、手で簡単に抜けます。遅くとも、花が咲いてから2週間以内には取り除きましょう。北米の資料では、花が咲いてからおよそ12〜15日で発芽できる種子ができはじめ、18〜23日ほどで種子が落ちはじめると報告されています。

Q3. 深く耕せば、イチビの種子はなくなりますか?

A. 深く耕すと、地表の種子は芽を出せない深さに埋まるため、その年のイチビは減ります。しかし、深く埋まった種子はほとんど死なず、1年に3%程度しか減らないという報告があります。次に深く耕したときに地表近くに戻り、また芽を出します。深耕だけに頼らず、種子を落とさせない対策と組み合わせることが大切です。

Q4. 太陽熱消毒でイチビの種子は死にますか?

A. イチビの種子は熱に非常に強く、太陽熱消毒の効果は小さいとされています。日本の研究では、イチビの種子をすべて死なせるのに、60℃で30時間、55℃で120時間の加熱が必要でした。イチビの多い畑では、太陽熱消毒だけに頼らず、手で抜く、マルチでおおう、種子を落とさせないといった方法を組み合わせましょう。

まとめ:イチビ対策の要点

  • イチビは、ビロードのような手ざわりのハート形の葉と、独特のにおい、王冠のような実が特徴のアオイ科の外来雑草
  • 繊維作物として導入されたほか、輸入飼料に混ざった種子が家畜のふんや堆肥を通じて畑に持ち込まれて広がった
  • 1株から約1,000粒、競合がなければ1万粒を超える種子を落とし、硬い種子は土の中で数十年生き残ることもある
  • 種子は熱にも強く、太陽熱消毒の効果は小さい。堆肥は十分に発酵した完熟堆肥を選ぶ
  • 対策の基本は「種子を落とさせない」こと。本葉数枚のうちに抜き、花が咲いたら2週間以内に取り除く
  • 深く耕しても種子は死なない。芽が出た直後に浅く削る、偽の種まき床、マルチ、野菜を早く茂らせて日陰をつくるといった方法を組み合わせる
  • 除草剤を使う場合は、雑草が小さいうちに、ラベルと農薬登録情報で使える作物・場所を確認してから使う

イチビは、一度入り込むと長く付き合うことになる雑草です。けれど、種子を落とさせない年を重ねれば、土の中の種子は確実に減っていきます。今年の夏、ハート形の大きな葉を見つけたら、まずは葉をさわって確かめ、花が咲く前に抜くところから始めてみてください。

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参考文献

  1. 日本雑草学会「雑草の解説:イチビ」 https://wssj.jp/kaisetsu/3_ichibi/ichibi_top.html
  2. 農研機構 畜産研究部門「写真で見る外来雑草:イチビ」 https://www.naro.go.jp/laboratory/nilgs/weedlist/w0100/w0101/066533.html
  3. 国立環境研究所「侵入生物データベース:イチビ」 https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80200.html
  4. 西田智子・黒川俊二・柴田昇平・北原徳久(1999)「畑雑草種子の生存に及ぼす加熱時間の影響」雑草研究 44(1): 59–66 https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed1962/44/1/44_1_59/_article/-char/ja/
  5. Mohler, C. L., Teasdale, J. R. & DiTommaso, A. “Velvetleaf.” Manage Weeds On Your Farm: A Guide to Ecological Strategies. SARE(Sustainable Agriculture Research and Education) https://www.sare.org/publications/manage-weeds-on-your-farm/velvetleaf/
  6. Cornell University “Weed Identification: Velvetleaf” https://blogs.cornell.edu/weedid/velvetleaf/
  7. 農林水産省「農薬登録情報提供システム」 https://pesticide.maff.go.jp/

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