
ナナホシテントウムシの対策に苦慮されている生産者も数多くおられますので、今回はナナホシテントウムシ対策について紹介していきます。
ナナホシテントウムシは、昆虫綱甲虫目テントウムシ科に属する昆虫で、一般的にテントウムシと呼ばれます。
成虫の体長は約5〜8mmで、赤い翅に7つの黒い斑点があるのが特徴です。
斑点の数は個体差があり、完全に対称でないこともあります。
ナナホシテントウムシの生態
このナナホシテントウムシは北半球全域、特に温帯地域に広く分布しています。
農地、草地、庭園、都市部の公園など、多様な環境に生息しており、特にアブラムシの多い場所を好みます。
成虫と幼虫ともに肉食性で、主にアブラムシやカイガラムシなどの小型の軟体節足動物を捕食します。
一匹のナナホシテントウムシは、1日で数十匹のアブラムシを捕食することができるため、自然の生物防除として重要視されています。
捕食が不足すると共食いすることもあります。
完全変態を行う昆虫で、卵、幼虫、蛹、成虫の4つの段階をたどります。
春から秋にかけて活動し、冬には成虫が越冬します。
卵は黄色で、主にアブラムシの群れの近くに産み付けられます。
幼虫は灰色や黒色をしており、成虫と同様にアブラムシを捕食します。
交尾は春に行われ、その後、雌は数百個の卵を産みます。
卵は約1週間で孵化し、幼虫は数週間かけて成長します。
幼虫の期間は約3〜4週間、その後、蛹になり、約1週間で成虫が出現します。
一年間に数世代を繰り返すことが出来るが、気温や食物の供給に依存します。
捕食者からの攻撃を防ぐため、翅の下に蓄えた毒性のある黄色い体液を分泌します。
体液には嫌な味と匂いがあり、これにより捕食者がナナホシテントウムシを避けるようになります。
また、鮮やかな色彩は捕食者に対する警告色として機能します。
主な天敵は鳥類やクモ、寄生バチなどです。
しかし、上述の防衛機構により、ある程度の天敵から身を守ることが出来ます。
寄生バチによって幼虫や蛹が寄生されることもあるが、寄生される率は低いです。
秋になると、気温が下がり、ナナホシテントウムシは集団で越冬する場所を探し始めます。
樹皮の下や建物の隙間、落ち葉の中などで越冬し、冬の間は活動を休止します。
越冬場所は複数個体が集まることが多く、集団越冬を行うことで生存率を高めます。
農業において、ナナホシテントウムシは有益な昆虫とされ、特にアブラムシの天敵として重要視されています。
化学農薬を使用せずにアブラムシの制御を行うバイオコントロールとして利用されることがあります。
ナナホシテントウムシの斑点の数や模様は、遺伝的要因や環境によって変異することがあります。
ナナホシテントウムシは、しばしば他のテントウムシと混同されることがあるが、斑点の数と色で区別出来ます。
ナナホシテントウムシが発生する原因
ナナホシテントウムシは温暖な気候を好むため、春から夏にかけて気温が上昇すると活動が活発化し、繁殖が促進されます。
特に、冬が比較的暖かく、越冬が順調に進むと、翌年の春に大量発生する可能性が高くなります。
降雨量が適度であると、植物の生育が良好になり、ナナホシテントウムシの餌となるアブラムシが増加することも発生を促進する要因となります。
ナナホシテントウムシは主にアブラムシを捕食するため、アブラムシの大量発生がナナホシテントウムシの大量発生につながります。
アブラムシの発生は、植物の新芽が多い季節や、農作物が集中的に栽培される地域では特に顕著になります。
気温の上昇や湿度の高まりがアブラムシの繁殖を助長し、それに伴いナナホシテントウムシも増加します。
ナナホシテントウムシは、集団で越冬することで生存率を高めます。
冬の気温が安定していて極端な寒波がない場合、越冬に成功する個体が増え、翌年春に大量の成虫が発生します。
また、適切な越冬場所が豊富な地域では、越冬個体数が多くなり、大量発生の原因となります。
農薬の使用が減少するか、または使用されない場合、ナナホシテントウムシの天敵が減少し、個体数が増加することがあります。
また、無農薬農法や有機農業が普及している地域では、自然な生物防除としてナナホシテントウムシが多く見られることがあります。
一方で、単一作物の大規模な栽培が行われる農地では、アブラムシの発生が増加し、それに伴ってナナホシテントウムシも大量発生する可能性があります。
森林伐採や都市化などで自然環境が変化すると、ナナホシテントウムシが新たな生息場所を求めて移動し、大量発生することがあります。
また、台風や豪雨などの自然災害によって、天敵の個体数が減少し、ナナホシテントウムシの繁殖が抑制されなくなる場合があります。
人間の活動により、ナナホシテントウムシが本来の生息域から新しい地域へ移動することがあります。
例えば、農作物の輸送や観賞用植物の取引に伴って、ナナホシテントウムシが意図せず新しい地域に運ばれ、その地域で大量発生することがあります。
新たな地域では天敵が少ないため、爆発的に増加する可能性があります。
ナナホシテントウムシの天敵が何らかの理由で減少すると、個体数が制御されずに増加します。
農薬の使用や環境汚染が天敵の減少を引き起こすことがあり、それがナナホシテントウの大量発生を助長します。
生態系のバランスが崩れると、特定の種が過剰に繁殖することがあります。
ナナホシテントウムシの場合、捕食者や競争相手が減少したり、餌資源が一時的に増加したりすることで、個体数が急増することがあります。
一部のナナホシテントウムシの集団では、遺伝的要因により繁殖力が非常に高い個体が存在することがあります。
これが集団全体の繁殖率を押し上げ、結果として大量発生につながることがあります。
ナナホシテントウムシによる食害の主な症状
ナナホシテントウムシは主に肉食性で、アブラムシやカイガラムシなどの害虫を捕食するため、一般的には農業において有益な存在です。
しかし、場合によっては、農作物に対して食害を引き起こすことがあります。
ナナホシテントウムシは主に肉食性ですが、餌が不足すると果実や花をかじることがあります。
特に熟した果実に対して傷をつけることがあり、これが収穫物の品質低下につながります。
りんご、ぶどう、桃などの果実に小さな噛み跡や穴ができ、外観が悪化します。
果実が傷つけられることで、その部分から腐敗が進行することもあります。
ナナホシテントウムシが餌不足やストレス下にあると、植物の葉をかじることがあります。
特に若葉に対して被害が出やすく、かじり跡が残ります。
葉の表面に不規則な小さな穴が開き、光合成の効率が低下する可能性があります。
花弁や花の中心部をかじることがあり、観賞植物にとっては特に問題となります。
花粉や蜜を摂取しようとする際に、花が物理的に損傷を受けることもあります。
ナナホシテントウムシは、植物の樹液や果汁を摂取することがあります。
果実に小さな傷をつけて果汁を吸うことで、その部分が変色したり腐敗しやすくなります。
特に、果樹園でのナナホシテントウムシの大量発生が問題となる場合があります。
ナナホシテントウムシが過剰に増えると、直接的な食害だけでなく、他の昆虫との競争や捕食バランスが崩れることによって、農作物全体に悪影響が出る可能性があります。
天敵としての役割を果たしつつも、作物自体を食害することで収穫量の減少を引き起こします。
ナナホシテントウムシの糞が農作物や果実に付着することがあり、外観を損ないます。
特に果実の表面に付着すると、洗浄しても跡が残ることがあります。
餌不足の場合、ナナホシテントウムシは共食いを行うことがあります。
その際、他のナナホシテントウムシが残した食痕が植物に残ることがあり、これが食害と誤認されることもあります。
ナナホシテントウムシが植物の一部を摂食することで、植物がストレスを受け、アレロパシー効果(化学物質による他の植物への抑制効果)がでる事があります。
これにより、周囲の植物の成長が抑制される可能性があります。
ナナホシテントウムシが果実や植物を食害することで、その部分が傷つき、病原菌やウイルスが侵入しやすくなります。
結果として、二次的な感染症や腐敗が進行し、食害が拡大するリスクがあります。
ナナホシテントウムシによる食害の対処・予防方法
●薬剤を使用する前の防除
ナナホシテントウムシの天敵である鳥類、クモ、寄生バチなどを積極的に保護し、農作物周辺に生息させることで、ナナホシテントウムシの個体数を自然に抑制します。
鳥類を誘引するために、巣箱を設置したり、果樹園や畑の近くに樹木を植えるなど、自然環境を整えます。
寄生バチなどの昆虫を増やすために、農地周辺に花畑や野草を植えて、昆虫の多様性を保つ事が必要です。
畑や農地での作物の輪作を実施し、ナナホシテントウムシの繁殖を抑制します。
連作を避けてナナホシテントウムシの好む植物を、毎年同じ場所で育てないようにする事が必要です。
畑に植える植物の種類を変えることで、ナナホシテントウムシが居心地の悪い環境を作り出します。
黄色の粘着トラップを使用し、ナナホシテントウムシを物理的に捕獲する方法が効果的です。
ナナホシテントウムシは黄色に引き寄せられるため、黄色い板やテープに粘着剤を塗布し、作物の周りに設置する事が必要です。
トラップは定期的にチェックし、ナナホシテントウムシが多く捕獲された場合は適宜交換します。
作物の周りに防虫ネットを張り巡らせ、ナナホシテントウムシの物理的な侵入を防ぎます。
特に果樹や野菜の若い苗や果実に対してネットを使用することで、ナナホシテントウムシの被害を減少させます。
防虫ネットは適切な目の大きさを選ぶことが重要です。
ナナホシテントウムシが少数であれば、手で直接捕まえるか、用具を使って物理的に取り除く方法が有効的です。
朝夕の比較的動きが鈍い時間帯に手作業で取り除くと効果的で、植物に傷をつけずに防除が出来ます。
捕獲したナナホシテントウムシは、畑から遠く離れた場所に移動させるか、適切に処分をする事が重要です。
健康な作物は害虫に対して耐性が高いため、適切な肥料の使用や水やり、土壌の管理によって作物の健康を保つ事が重要です。
有機質肥料や堆肥を使用して土壌を改良し、作物の成長を促進することで、ナナホシテントウムシの食害に対する耐性を高めます。
ナナホシテントウムシは冬に越冬するため、秋口に集団で越冬する場所を確認し、そこを除去することで翌年の発生を抑える事が出来ます。
落ち葉や枯れた植物、石や木の皮の下など、越冬場所を定期的に掃除し、潜伏場所を取り除いておきます。
建物の隙間や物陰もチェックし、越冬個体を見つけた場合は取り除きます。
ナナホシテントウムシが好まない植物(ニンニク、ネギ、ハーブ類)を作物の間に植えることで、ナナホシテントウムシの侵入を抑制します。
これにより、農地全体の生物多様性が高まり、ナナホシテントウムシの発生を自然に抑える効果が期待出来ます。
水を使ってナナホシテントウムシを直接洗い流す方法も効果的です。
水圧の高いホースで作物に付着したナナホシテントウムシを洗い流し、物理的に作物から除去します。
その後、土壌中での活動を抑制するため、捕獲した個体を別の場所に移動させるか処分する事が必要です。
果実や若い芽を不織布や紙袋などで包み、ナナホシテントウムシの直接の接触を防ぎます。
特に果実が熟す時期には、被覆することでナナホシテントウムシの食害を予防が出来ます。
被覆材は通気性が良いものを選ぶ事が必要です。


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