ヨトウムシの生態と発生する原因、対策について紹介

ヨトウムシ

ヨトウムシの対策に苦慮されている生産者も数多くおられますので、今回はヨトウムシ対策について紹介していきます。

ヨトウムシは、主に夜行性の鱗翅目の幼虫の総称で、農作物や園芸植物に大きな被害を与える害虫として知られています。

世界中に広く分布しており、日本全国でも見られます。

温暖な地域に多いが、寒冷地でも生息する種もいます。

ヨトウムシの生態

このヨトウムシは、農業地帯、家庭菜園、花壇、森林など、さまざまな環境に適応します。

ヨトウムシは、主にヤガ科に属します。

ヤガ科には、多くの農業害虫が含まれます。

有名な種としては、アブラムシの大発生時に見られるシロモンヨトウや、トビイロヨトウがあります。

成虫は一般的に茶色や灰色の地味な色合いをしており、夜間に活動します。

幼虫は、緑色や茶色で、体長は3~5センチメートル程度になります。

丸く太った体型で、触ると丸くなる性質があります。

1年に数回、地域によって異なるが、3~5回の世代を繰り返します。

成虫は卵を植物の葉や茎に産み付けます。

卵は数日から1週間ほどで孵化し、幼虫となります。

幼虫期は2~4週間程度で、食欲旺盛に植物を食害します。

幼虫は成長すると土中に潜り、蛹となります。

蛹期間は1~2週間ほどで、その後成虫が羽化します。

幼虫は多食性で、さまざまな植物を食べます。

特に、キャベツ、レタス、トマト、ジャガイモ、ニンジン、イネなどの農作物が被害を受けやすいです。

植物の葉や茎、果実を食害し、特に幼い苗や若い植物に対しては甚大な被害を与えます。

夜行性のため、昼間は土中や葉の裏などに隠れ、夜になると活動を開始します。

幼虫が植物の根元や茎を切断するようにかじり取るため、植物が枯死することが多いです。

被害を受けた植物は、葉がかじられるだけでなく、全体が倒れることがあります。

ヨトウムシの発生が多い年には、広範囲にわたって農作物に被害が出ることがあります。

天敵には、寄生バチや寄生バエ、捕食性昆虫(クサカゲロウやアリ)、鳥類、両生類などがいます。

また、農地の清掃や作物の輪作も、ヨトウムシの発生を抑制するために有効です。

ヨトウムシの発生を予測するためには、フェロモントラップや灯火トラップを用いて成虫の飛来をモニタリングする方法があります。

これにより、幼虫の発生前に対策を講じることが可能となります。

ヨトウムシは、異なる種が混在して発生することが多いため、正確な種の同定が重要です。

ヨトウムシが発生する原因

ヨトウムシは温暖な気候を好み、高温多湿の環境で特に活発に活動します。

春~夏にかけての温暖な気温が幼虫の成長を促進し、大発生の要因となります。

気温が急激に上昇したり、長期間にわたって高温が続くと、ヨトウムシの繁殖活動が活発化し、世代交代が早く進むことで発生が増加します。

適度な降雨はヨトウムシの発生を助長するが、過度の降雨や長期間の乾燥は発生を抑制することがあります。

しかし、雨季の後に気温が上がると、成虫の活動が活発化し、発生が増加する傾向があります。

同じ種類の作物を広範囲にわたって連作すると、特定のヨトウムシ種がその作物を標的にして大発生するリスクが高まります。

同じ作物を連続して栽培することにより、土壌中に害虫が蓄積されやすく、ヨトウムシが次世代にわたって発生し続ける原因となります。

特に窒素肥料の過剰施用は、作物の成長を促進する一方で、作物の葉が柔らかくなり、ヨトウムシが食害しやすくなる環境を作り出します。

農薬の乱用や不適切なタイミングでの散布は、ヨトウムシの天敵を減少させ、結果的にヨトウムシの発生を助長することがあります。

また、農薬抵抗性のヨトウムシが増えることで、さらに発生が増加するリスクがあります。

畑やその周辺に雑草が多いと、ヨトウムシが卵を産みつける場所や幼虫が隠れる場所を提供し、発生が増加する要因となります。

収穫後に作物の残渣(刈り取った茎や葉など)を放置すると、ヨトウムシがそこに潜んで次のシーズンに向けて繁殖するため、適切な処理が行われないと発生の原因となります。

ヨトウムシは湿った土壌を好んで、水はけが悪い畑ではヨトウムシが増加することがあります。

また、土壌中に有機物が豊富に存在すると、それが幼虫の餌となり、発生が促進されることがあります。

寄生バチや捕食性の昆虫、鳥類など、ヨトウムシを捕食する天敵の数が減少すると、ヨトウムシの個体数が増加しやすくなります。

これは、農薬の乱用や生態系の破壊によるものが多いです。

森林伐採や土地開発などで生態系が破壊されると、ヨトウムシの天敵が減少し、発生が増加することがあります。

また、外来種の導入により、既存の生態系が乱れることも原因の一つとなります。

特に若い作物や苗の成長期は、ヨトウムシにとって非常に魅力的な餌となり、大発生の原因となることがあります。

ヨトウムシの成虫は、季節的に移動しながら産卵することがあります。

これにより、広範囲で発生が確認される場合があり、気候条件に応じて複数の世代が発生することがあります。

フェロモントラップや灯火トラップなどを用いて成虫をモニタリングし、発生を予測することができるが、これが行われないと、発生の予防が難しくなります。

農地周辺や作物間に落ちた葉や雑草を放置すると、ヨトウムシの隠れ場所となり、発生を助長する原因となります。

ヨトウムシによる食害の主な症状

ヨトウムシによる食害は、さまざまな作物に対して甚大な影響を及ぼします。

幼虫が地表付近で植物の茎をかじり、切断してしまうことが多いです。

これにより、植物が倒れ、枯死することがよく見られます。

特に苗や若い作物は被害が大きく、立ち枯れを引き起こします。

切断された茎は、しばしば地面に残されるが、完全に食べられることもあります。

このような症状は、苗立枯症(なえたちがれびょう)とも呼ばれます。

ヨトウムシの幼虫は葉をかじり取ることで、葉に不規則な穴や欠けが生じます。

葉が部分的に食べられることで、光合成能力が低下し、植物の成長が抑制されます。

若い葉や新芽が特に被害を受けやすく、成長点を食害されると、その後の成長に深刻な影響を与えます。

一部のヨトウムシの種は果実を直接食害することがあります。

トマト、ピーマン、ナスなどの果菜類が特に影響を受けやすいです。

食害を受けた果実には穴が開き、内部に幼虫が侵入して食害することがあります。

これにより果実が腐敗し、商品価値が著しく低下します。

植物の葉や茎が広範囲に食害されることで、全体的な生長が阻害されます。

これは、光合成の効率が大幅に低下し、必要な栄養が作物に供給されにくくなるためです。

生長が遅れるだけでなく、最終的に収穫量の減少や品質の低下を引き起こすことが多いです。

ヨトウムシは群生して食害を行うことがあり、被害が局所的に集中することがあります。

一箇所で大量の幼虫が活動するため、その部分の作物が壊滅的な被害を受ける可能性が高いです。

例えば、畑の一角が完全に食害され、他の部分は比較的無傷であるというような現象が見られることがあります。

ヨトウムシによる食害が激しい場合、植物全体が枯死することがあります。

これは、茎が切断されたり、葉が広範囲に食べられたりするため、植物が必要な水分や栄養を吸収できなくなるからです。

枯死は作物の成長初期に多く見られ、特に苗の段階での被害は致命的となることが多いです。

食害の結果、作物全体が弱り、病気にかかりやすくなります。

特に傷口から病原菌が侵入し、二次感染を引き起こすことがあります。

ヨトウムシによって開けられた傷口が病害虫の侵入経路となり、病害が広がることもよく見られます。

ヨトウムシは夜間に活動するため、被害が進行するまで発見が遅れることが多いです。

これにより、食害が深刻化し、気付いたときには広範囲に被害が広がっていることがあります。

昼間は土中や葉の裏などに隠れているため、発見が難しいため、被害の進行します。

食害された作物は、葉や果実に穴が開いたり、部分的に欠けたりして見た目が悪くなります。

食害を受けた作物が枯れると、その周辺の健康な作物にまでヨトウムシが移動し、被害が拡大することがあります。

一度発生すると、被害が連鎖的に広がることが多いです。

ヨトウムシによる食害は、発見が遅れることや、隠れていることが多いことから、防除が難しいです。

特に、土中に潜ったり、作物の下部に隠れている幼虫を完全に駆除するのは困難です。

その結果、被害が持続し、収穫期まで影響を及ぼすことが多いです。

ヨトウムシによる食害の対処・予防方法

●薬剤を使用する前の防除

フェロモントラップやライトトラップを設置して成虫を捕獲し、繁殖を防ぎます。

これにより、次世代の幼虫の発生を抑制することが出来ます。

夜間にヨトウムシが活動する時間帯に懐中電灯などを使って畑を巡回し、見つけた幼虫を手で捕まえて駆除します。

土中や葉の裏、根元などに隠れていることが多いので、注意深く探すことが必要です。

幼虫が作物に到達するのを防ぐために、畑の周囲に物理的なバリアを設置します。

例えば、地面に細かなメッシュやフェンスを張り巡らせることで、幼虫の移動を制限します。

成虫が産卵するのを防ぐために、防虫ネットを作物全体に被せます。

この方法は、特に小規模な家庭菜園や高価な作物に対して有効です。

同じ作物を同じ場所に連続して栽培しないようにすることで、ヨトウムシの発生を抑えます。

特定の作物に依存する害虫の繁殖サイクルを断つため、輪作を取り入れます。

ヨトウムシを忌避する効果がある植物(例: タマネギ、ニンニク、バジルなど)を間作やコンパニオンプランツとして植えることで、害虫を寄せ付けにくくします。

作物の生育が早い段階で収穫することで、幼虫の活動が活発になる時期に被害を避けることが出来ます。

天敵の導入と保護**: ヨトウムシの幼虫を捕食する天敵(例: 寄生バチ、カエル、鳥類、クモ、クサカゲロウなど)を保護し、導入することで、自然な抑制力を強化します。

花やハーブを植えて、ヨトウムシの天敵である有益昆虫を引き寄せます。

特に、花蜜を提供する植物は有益昆虫を誘引する効果が高いです。

農薬を使用しないが、生物農薬(例: バチルス・チューリンゲンシス、Bt菌)を使用することで、幼虫に感染させて駆除することが出来ます。

収穫後に畑に残った作物の茎や葉を速やかに片付け、ヨトウムシが潜む場所を減らします。

これにより、幼虫が次のシーズンに備えて生き残ることを防ぎます。

畑やその周辺の雑草を定期的に取り除くことで、成虫が産卵する場所を減らし、幼虫の発生を抑制します。

土壌を定期的に耕して、幼虫や蛹が土中に隠れるのを防ぎます。

耕起により、ヨトウムシの幼虫が地表に露出し、捕食されやすくなります。

作物の生育状況を定期的に観察し、ヨトウムシの幼虫やその被害を早期に発見します。

早期発見により、対策を迅速に講じることが出来ます。

地域の害虫発生予報を活用し、ヨトウムシの発生時期に合わせて防除対策を講じます。

有機堆肥を使って土壌の健康を維持し、作物の抵抗力を高めます。

健康な作物は害虫の被害を受けにくくなります。

適切な水管理を行い、土壌が過度に湿潤にならないようにします。

ヨトウムシは湿った環境を好むため、過度な灌漑は避けます。

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