アザミウマの生態と発生する原因、対策について紹介

アザミウマ

アザミウマの対策に苦慮されている生産者も数多くおられますので、今回はアザミウマ対策について紹介していきます。

アザミウマ(Thrips)は、Thysanoptera目に属する小型の昆虫で、世界中に広く分布しています。

アザミウマは約6000種が知られており、主に二つの亜目(TerebrantiaとTubulifera)に分類されます。

アザミウマの生態

一般的に体長は1〜2ミリメートル程度で、体は細長く、色は黄褐色から黒色まで様々で、肉眼では確認しづらいです。

体は左右対称で、紡錘形または円筒形をした細長い形状が特徴です。

翅を持つ種と持たない種がいて、翅を持つ種は細長くフリンジ状の縁毛を持っており、翅は飛行というよりは滑空に近い動きをします。

アザミウマは口吻(こうふん)を持っていて、植物の細胞を破壊して内部の液体を吸収します。

この口吻は非対称で、上顎が発達しており、植物組織を傷つけます。

頭部からは2本の触角が伸びています。

アザミウマの種類には、交尾をして普通に繫殖するものの他に、交尾をしないと雌が生まれないタイプ、雌だけで増えるタイプとかがあります。

雌成虫は、葉脈を切り裂いてその中に産卵管を突き刺して、1粒ずつ卵を産み付けます。

孵化した幼虫は2回の脱皮を経て地上に落下して、土の中や落葉の中で蛹になって、やがて成虫になります。

卵から成虫になるまでには約15日程度で、年に10回以上は発生を繰り返します。

ただし、寒いのがとても苦手なので、露地では越冬しません。

成虫の寿命は1ヶ月程度ですが、その間に多くの卵を産みます。

一部のアザミウマは植物ウイルスの媒介者としても知られています。

特にトマト黄化葉巻ウイルス(Tomato spotted wilt virus, TSWV)は、アザミウマによって広がります。

アザミウマの代表的な種類としては、下記が挙げられます。

コナガアザミウマは小麦や野菜などに寄生します。

ミナミキイロアザミウマは温室栽培の野菜や花きなどに寄生します。(1978年に発見された侵入害虫です。)

チャノキイロアザミウマは茶や果樹などに寄生します。

ネギアザミウマはネギやリーキなどに寄生します。

アザミウマが発生する原因

アザミウマは温暖な気候を好んで気温が高く、乾燥した環境ではアザミウマの発生が増加します。

特に気温が25〜30℃の範囲で、湿度が低いと活動が活発になり、春から秋にかけての乾燥した時期に発生しやすい傾向があります。

冬季には活動が鈍化し、個体数も減少しますが、温暖な地域では年間を通じて活動を続ける事が出来ます。

アザミウマは小型で軽い為、風によって、遠く離れた場所から飛来して、新たな発生源となる事があります。

長雨はアザミウマの発生を抑制する傾向がありますが、雨が少なく乾燥した状態が続くと発生が増加します。

同じ作物を長期間にわたり連作すると、アザミウマの好適な生息環境が継続的に提供される為、発生が増加します。

日当たりの良い場所では、植物の生育が旺盛になり、アザミウマの餌となる部分が豊富になる為、発生しやすい傾向があります。

植物を密集して植えると、風通しが悪くなり、湿度が上昇する為、アザミウマの発生を促進します。

若い芽や花、果実など、柔らかい組織を好んで吸汁する為、生育初期の植物で発生しやすい傾向があります。

窒素肥料の過剰施用は、植物を軟弱にし、アザミウマの加害を助長する可能性があります。

雑草はアザミウマの隠れ家となる為、除草を徹底する事で発生を抑える事が出来ます。

窒素肥料を過剰に施用すると、植物が軟弱になり、アザミウマの加害を受けやすくなります。

有機物が豊富な土壌は、アザミウマの幼虫にとって理想的な環境です。

有機物の管理を適切に行い、堆肥や落ち葉の堆積を避ける事で、幼虫の発生を抑える事が出来ます。

アザミウマによる食害の主な症状

葉の表面に銀色の斑点やリング状の模様が現れます。

これはアザミウマが葉の細胞を吸汁する際に細胞内容物が抜け、空気が入り込む為です。

被害が進行すると、斑点が融合して広範囲に広がり、葉全体が銀白色になり、被害を受けた葉は黄色や茶色に変色する事があります。

特に若い葉では変色が顕著で、植物の成長を阻害します。

変色は葉の裏側にアザミウマが集まりやすい為、裏側をよく観察する事で早期発見が可能です。

アザミウマの吸汁により、葉が縮んだり、ねじれたり、奇形になります。

特に新芽や若い葉が被害を受けると、正常な成長が阻害され、萎縮や変形が生じます。

被害が進行すると、花弁が早期に脱落し、結実が不完全になる事があります。

アザミウマが果実に吸汁すると、果実の表面に傷が付き、褐色の斑点が現れます。

被害がひどい場合、果実が変形し、成長不良を引き起こす事もあります。

吸汁による細胞のダメージにより、果実が裂ける事があります。

特にトマトやキュウリなどの柔らかい果実に顕著です。

アザミウマはウイルス病の媒介者としても知られています。

アザミウマの被害により、茎が変形し、弱くなる事があります。

これにより、植物が倒れやすくなり、支柱が必要になる事もあります。

茎が弱くなる事で、植物の水分や栄養分の輸送が阻害され、全体の健康状態が悪化します。

アザミウマによる食害の対処・予防方法

植物の葉の裏や花、果実にアザミウマが付着していないか、食害痕がないか、定期的に観察する事が必要です。

小さなアザミウマを肉眼で見つけるのは困難なので、拡大鏡を使うと便利です。

アザミウマは黄色に引き寄せられる為、黄色粘着トラップを設置する事で捕獲数を減らします。

少量の発生であれば、手で捕殺して、葉や花に付着したアザミウマは水で洗い流すと良いです。

ハウス栽培では、遮光ネットを使用してアザミウマの侵入を抑制します。

密植を避けて、植物間の風通しを良くする事で、アザミウマの繁殖を抑制します。

被害を受けた植物の部分を切除して、適切に処分する事で、アザミウマの繁殖を抑えます。

マリーゴールド、オクラ、ゴマなどのバンカープランツを栽培して、天敵を誘引すると良いです。

同じ場所で同じ作物を連作しない事で、アザミウマの発生を減少させます。

輪作を行う事でアザミウマの発生密度を下げます。

畑や温室周辺の雑草を定期的に除去して、アザミウマの隠れ場所を減らします。

アザミウマに抵抗性のある品種を栽培します。

適切な施肥管理を行い、植物の健康を維持する事で、アザミウマの被害を受けにくくします。

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