
べと病とは?
べと病とは、野菜や植物に発生する代表的な病気のひとつで、特に湿度の高い環境で広がりやすい厄介な病害です。多くの作物に被害を与え、その進行は時に急速で、収穫に大きな損失をもたらすことがあります。病原体の正体は、カビの一種である卵菌類に属する「糸状菌(しじょうきん)」で、主にペロノスポラ属やプラズモパラ属などが知られています。
べと病は、レタス、ホウレンソウ、タマネギ、キュウリ、ブロッコリーなどの野菜類に加えて、ブドウなどの果樹にも発生することがあり、園芸農家や家庭菜園の生産者にとっては見逃せない存在です。
べと病の名前の由来
「べと病」という名前は、その症状が「べっとり」とした湿潤感を伴うことに由来しています。実際には病斑部に水浸状の変色が現れ、その後に黄変、さらに白いカビ状の病斑が裏面に形成されるという進行をたどるのが特徴です。
病原菌の正体と分類
べと病の病原体は、カビの仲間の中でも「卵菌類(Oomycetes)」に分類される生物で、細菌や真正のカビ(子嚢菌や担子菌)とは異なる性質を持っています。特に「ペロノスポラ・デストラクター」や「プラズモパラ・ヴィティコラ」などは作物ごとに特異的な病原性を発揮することが知られています。
これらの病原菌は胞子の一種である「遊走子」を形成し、水分を介して拡散します。土壌中に残された病原体が、雨や水やりなどで葉に付着し、適切な湿度と温度条件が揃うと感染が成立します。
症状の具体的な現れ方
べと病の症状は、作物の種類によってやや異なりますが、共通する典型的な特徴があります。
・葉の表面に黄色~褐色の不規則な病斑が現れる
・葉の裏面には灰白色〜紫色のカビが形成される
・葉全体が枯死しやすく、株全体が弱る
・発病した葉は乾燥せずに湿ったまま朽ちる
例えば、タマネギでは初期に葉に黄色い斑点が現れ、進行すると葉が湾曲し、最終的に全体が倒伏することもあります。ブロッコリーやカリフラワーでは下葉から症状が始まり、収穫前の時期に株全体をだめにしてしまうことがよくあります。
発病条件と発症のしくみ
べと病は、「高湿度」「葉の濡れた状態」「気温15〜25℃前後」という三条件が揃うと一気に広がるという特徴があります。とくに夜露や早朝の水やりのあとに葉が乾かずにいると、胞子が発芽しやすく、葉の気孔から侵入して内部で菌糸を伸ばします。
日中の気温が25℃を超えると活動が鈍ることもありますが、逆に20℃前後の曇天が続くと、感染と胞子形成が連続的に起こりやすくなります。
感染後は葉の内部で病原菌が細胞間を移動し、養分を奪いながら増殖を続けます。最終的には胞子を大量に形成し、周囲の健康な葉へと感染が広がっていきます。
感染の拡大経路
べと病の主な伝染経路は以下の通りです。
・病原菌が付着した種子や苗の持ち込み
・前作物の残さや土壌中に残る病原菌の越冬
・風雨による胞子の飛散
・水やり時の水跳ねや灌水による葉面の濡れ
これらの経路を通じて、短期間で畑全体に広がる危険性があるため、発病初期の段階での対応が極めて重要です。
類似病との見分け方
べと病は、他の葉面病害と症状が似ており、混同されやすい病気です。特に「うどんこ病」「さび病」「斑点病」などと見分けが難しいことがあります。
うどんこ病:葉の表面に白い粉状の斑点が広がるが、裏面には胞子が見られないことが多い
さび病:葉の裏に赤褐色や黄色の小斑点が見られ、湿気が少ない環境でも発症する
斑点病:黒褐色の小さな病斑が広がり、べと病のような湿潤感が少ない
特にべと病では「裏面のカビ状胞子」が最大の鑑別ポイントとなるため、葉の裏を丁寧に観察することが大切です。
気をつけたい作物別の特徴
・タマネギ:春先から梅雨時期にかけて感染が拡大。葉の柔らかい時期に発生しやすい。
・ホウレンソウ:生育初期に感染しやすく、収穫直前に枯れることもある。
・レタス:葉の密度が高く、風通しの悪い条件で多発。
・キュウリ・カボチャ:ツルが繁茂する時期に下葉から症状が進行する。
それぞれの作物ごとに注意するべき季節や発生しやすい条件が異なるため、作型ごとの対策が求められます。
まとめ
べと病は、見た目こそ単なる葉の変色に見えることもありますが、その実態は作物に深刻なダメージを与える病害です。とくに湿潤な気候を好み、急激に広がるという性質があるため、早期発見と予防が非常に重要となります。
今後は、病原菌の生態や感染経路を正しく理解し、適切な栽培管理と薬剤の選定を通じて、べと病から大切な作物を守ることが求められます。
べと病の治療薬は?
べと病は多くの野菜や果樹に深刻な被害をもたらすため、農家や家庭菜園の生産者にとって「どう治療するか?」は非常に重要なテーマです。本章では、べと病に対して有効とされている治療薬について、その種類や作用機序、使用方法、注意点までを詳しく解説します。
治療薬の基本的な考え方
べと病の治療薬は、病気が発生した後に使用して「病気の進行を止める」「感染部位の菌を抑制する」ことを目的とした薬剤です。予防的に使う薬剤とは異なり、既に感染した作物への即効性が求められます。
べと病の原因である卵菌類(糸状菌の仲間)は、一般的なカビ(子嚢菌や担子菌)とは異なるため、特定の薬剤でなければ効果が見られません。したがって、使用する薬剤も「卵菌類に効果のあるタイプ」でなければならないのです。
代表的なべと病治療薬一覧
以下に、現在日本国内で広く使用されているべと病治療薬を作物別に整理しながら紹介します。
ダコニール1000(有効成分:TPN)
広範囲の野菜や果樹に使える治療薬。接触型(葉の表面にとどまり、菌を退治する)の殺菌剤で、耐性菌が出にくい特徴があります。べと病の発生直後に散布することで、症状の進行を抑制します。
・対象作物:キュウリ、タマネギ、レタス、ホウレンソウなど
・使用タイミング:発病初期に2〜3回程度
・注意点:雨の後には効果が薄れるため再散布が必要なこともあります
リドミルMZ(有効成分:メタラキシル・マンゼブ)
全身移行性を持つ殺菌剤で、葉面に散布すると葉内部まで薬が行き渡ります。葉の内側に侵入したべと病菌にも作用するため、発病後の治療にも有効です。特にタマネギやホウレンソウでの使用例が多い薬剤です。
・対象作物:タマネギ、レタス、キャベツなど
・使用タイミング:発病直後
・特徴:耐雨性が高く、持続効果も長い
・注意点:薬剤耐性菌の出現を防ぐため、連続使用は避ける
ザンプロDM(有効成分:アメトクトラジン・ジメトモルフ)
新世代の治療・予防の両方に優れた薬剤です。ジメトモルフは細胞壁の合成を阻害し、アメトクトラジンはミトコンドリアのエネルギー産生を妨げます。このダブルアタックで、感染後の菌の増殖を効果的に止めます。
・対象作物:キュウリ、トマト、レタスなど
・使用タイミング:感染初期~中期
・特徴:抗菌スペクトルが広く、耐性対策としても優れる
・注意点:他の作用機序を持つ薬とローテーション使用が望ましい
キノンドー(有効成分:キノメチオナート)
葉の表面から吸収され、内部の病原菌を殺菌する浸透移行型の殺菌剤。発病葉の進行を遅らせることができ、果菜類や葉菜類に幅広く利用されています。
・対象作物:ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリーなど
・使用タイミング:初期〜中期の感染時
・特徴:経済的で扱いやすい
・注意点:高温時の使用には注意が必要
発病後の対応:適切な薬剤選択のポイント
発病後に治療薬を使用する場合は、次の3点を重視して選ぶことが重要です。
1. 感染の深さと薬剤の「浸透性」
接触型の薬剤は表面の病原菌に有効ですが、葉の内部に入り込んだ菌には効果が限定的です。症状が葉の内部に進行している場合は、リドミルやザンプロDMのような浸透移行性の薬剤を選びましょう。
2. 散布タイミングと回数
治療薬であっても、散布が遅れると効果が薄くなります。初期症状を確認した段階ですぐに散布するのが理想です。必要に応じて、7日間隔で2〜3回の散布を行うことで再発を防ぎます。
3. 耐性菌への対策
同じ薬剤を繰り返し使い続けると、病原菌が耐性を獲得して効果が薄れてしまうことがあります。薬剤をローテーションさせたり、異なる作用機序を持つ薬剤を組み合わせることで、耐性菌の発生を抑制できます。
治療薬の使用にあたっての注意点
べと病の治療薬を使用する際は、以下のような基本的注意点も忘れてはなりません。
・収穫前日数(PHI)を確認:食用作物では使用後何日で収穫できるかが定められており、守らないと残留農薬の問題となります。
・希釈倍率を厳守:濃すぎると薬害を起こす可能性があり、薄すぎると効果が不十分になります。
・適切な散布量と方法:葉の表と裏、株元に均等に散布することが重要です。
・防護服・マスクの着用:薬剤は吸引や皮膚接触により人体への影響もありうるため、散布時は防護を徹底しましょう。
まとめ
べと病の治療には、専用の薬剤を適切なタイミングで使用することが何より重要です。病原体がカビの中でも特異な「卵菌類」であることを理解し、それに特化した薬剤を選ばなければなりません。
また、治療薬は万能ではなく、早期発見と初期対応が勝敗を分けるカギになります。薬剤選びでは、作物ごとの適応や感染の進行状況、作用機序をよく見極め、耐性菌対策として複数薬剤をローテーションで使う工夫も必要です。
べと病の薬剤は?
べと病に対抗するためには、的確な薬剤の選択が欠かせません。病原体となる卵菌類は、一般的な殺菌剤では効果が見込めないことが多く、専用の薬剤を正しく選び、効果的に使用することが成功の鍵を握ります。この章では、べと病に有効な薬剤を「成分別」「作用機序」「作物別適用例」に分けて詳しく解説していきます。
卵菌類に効く薬剤の分類
べと病の薬剤は、大きく「予防型」と「治療型」に分けられます。さらに、作用の仕方に応じて以下のようなカテゴリーに分類されます。
- 接触型殺菌剤(保護剤)
葉の表面にとどまり、病原菌の侵入を防ぐ。予防的に使用。
例:マンゼブ、TPN(ダコニール) - 浸透移行型殺菌剤(治療剤)
葉から吸収されて内部に浸透し、すでに感染した病原菌を抑制。
例:メタラキシル(リドミル)、ジメトモルフ(ザンプロDM) - 全身移行型殺菌剤(系統剤)
植物の導管を通じて全体に行き渡り、広範囲の病原菌に対応。
例:フルアジナム(ゲッター)、アメトクトラジン(ザンプロDM)
これらの薬剤を状況に応じて使い分けることが、病気の蔓延防止につながります。
主な有効成分とその特徴
ここでは、べと病に対して特に効果が認められている有効成分と、それを含む代表的な製品を紹介します。
1. メタラキシル(Metalaxyl)
・商品例:リドミルMZ、リドミルゴールド
・作用機序:RNA合成阻害により菌の増殖を抑制
・特徴:発病後の葉内にも浸透し、内部から病原菌を抑える
・適用作物:ホウレンソウ、タマネギ、レタス、メロンなど
2. TPN(テトラクロロイソフタロニトリル)
・商品例:ダコニール1000
・作用機序:細胞膜の構造を破壊し、表面の病原菌を殺菌
・特徴:接触型で耐性菌が出にくい、広範囲に使用可能
・適用作物:キュウリ、キャベツ、ハクサイ、ブロッコリーなど
3. ジメトモルフ(Dimethomorph)
・商品例:ザンプロDM
・作用機序:細胞壁の合成を阻害し、成長を抑制
・特徴:卵菌類専用の薬剤で、進行中の病原菌にも高い効果
・適用作物:レタス、カボチャ、ピーマン、ブドウなど
4. アメトクトラジン(Ametoctradin)
・商品例:ザンプロDM
・作用機序:ミトコンドリアでの電子伝達を阻害
・特徴:抗菌スペクトルが広く、ローテーション使用に適す
・適用作物:トマト、レタス、キュウリ、スイカなど
5. マンゼブ(Mancozeb)
・商品例:リドミルMZとの混合剤など
・作用機序:酵素阻害により病原菌の代謝を抑える
・特徴:接触型、予防効果が高く耐性菌対策として優秀
・適用作物:タマネギ、キャベツ、ホウレンソウなど
作物別・推奨薬剤の例
べと病は多くの作物に発生しますが、それぞれの作物に合った薬剤を選ぶことが重要です。以下に代表的な作物ごとに推奨される薬剤を整理します。
レタス
・リドミルMZ:初期症状の抑制
・ザンプロDM:予防と治療を両立
・ダコニール1000:定期的な予防散布
ホウレンソウ
・キノンドー:浸透移行性で内部まで効く
・TPN製剤:露地栽培において表面保護に最適
・ゲッター:栽培後半に効果的な全身移行剤
タマネギ
・リドミルゴールド:播種直後からの処理に
・ジメトモルフ系:春先からの予防として有効
・マンゼブ系混合剤:耐性回避のためのローテーション用
キュウリ・カボチャ類
・ザンプロDM:べと病とつる枯病を同時に防除
・TPN製剤:葉の密集時期の表面殺菌に有効
・フルアジナム:果実肥大期の全身移行用に
効果的な薬剤使用のための工夫
薬剤を正しく選んでも、使い方に誤りがあると効果が発揮されません。以下のような点に注意して活用しましょう。
散布のタイミングと回数
べと病は湿度に依存して爆発的に拡大するため、雨の前や朝露が残る時期に散布すると効果的です。感染後は7日間隔で2〜3回の連続散布が基本です。
薬剤のローテーション使用
1種類の薬剤を繰り返し使うと耐性菌が出現するため、「作用機序の異なる複数の薬剤を順番に使う」ことが大切です。例えば、初期にTPNを使用し、その後ジメトモルフ、最後にメタラキシル系を使うといった組み合わせが有効です。
散布方法の工夫
葉の表面だけでなく裏面にもしっかり届くように、霧状のスプレーや動力噴霧器を用いると効果が上がります。また、風のない日に散布すると、葉への付着率が高まります。
まとめ
べと病の薬剤選びは、「病原体が卵菌類であること」「感染の深さ」「作物の種類」など複数の要素を総合的に見極める必要があります。
特に有効成分ごとの作用機序を理解し、予防型と治療型を使い分け、さらに耐性菌対策として薬剤ローテーションを徹底することで、べと病の被害を最小限に食い止めることができます。
べと病の治療は?
べと病は、湿度と気温がそろう条件下で一気に拡大する恐れのある病害です。特に生育の盛んな時期に感染すると収穫量や品質が大きく低下するため、「べと病にかかってからどう治すか」という視点での対策は極めて重要です。この章では、べと病発症後の具体的な治療手順や管理方法について、実践的かつ科学的に解説していきます。
べと病の治療における基本方針
べと病の治療は、発病の「初期に対応すること」が成功の鍵です。症状が進行すると葉が壊死し、治療では回復が望めなくなるため、早期発見と早期対応がもっとも重要となります。
治療方針は以下の3つの軸で展開されます:
- 発病株の隔離・除去
- 薬剤による治療(接触型・浸透型の併用)
- 栽培環境の再調整(湿度管理・風通し・肥料の見直し)
1. 発病部位の除去と焼却
発病が確認されたら、まずやるべきことは感染葉の切除とその「持ち出し」です。病斑部には胞子が大量に付着しており、そのまま畑に置いておくと空気中や雨で拡散します。
処置の手順
・病気が広がる前に、変色している葉・株を速やかに切除
・切除後はその場に放置せず、袋に密閉して畑外で焼却処理
・切除に使ったハサミや手袋は消毒(次亜塩素酸水やアルコールで)
「もったいないから」と放置した葉は、翌週には感染源となるため、思い切った除去が必要です。
2. 薬剤による積極的な治療
すでに感染が確認された株には、「浸透移行型の治療薬」+「接触型の殺菌剤」を併用して、内部と表面の両面から病原菌の増殖を抑えるのが理想です。
使用例(レタスやホウレンソウの場合)
・1回目:ジメトモルフ(ザンプロDM)を全面散布
・2回目(5~7日後):TPN製剤(ダコニール1000)を全体に噴霧
・3回目(さらに5~7日後):メタラキシル系薬剤(リドミルMZ)
このように、作用機序の異なる薬剤をローテーションで使用し、耐性菌の発生を防ぐとともに、菌の活動を完全に封じることがポイントです。
散布のコツ
・葉の表と裏、株元までくまなく薬液がかかるように
・風のない早朝か夕方を選んで散布する(薬液の乾燥を防ぐ)
・土壌が湿っていると薬の吸収が促進される(灌水後が理想)
3. 栽培環境の見直しと整備
べと病は単に菌を退治するだけでは完全に治療できません。菌が再感染しやすい**「湿潤な環境」**が続くと、薬剤で抑えた後も再発する可能性が高まります。
湿度・風通しの改善
・株間を広げて通気性を確保
・畝(うね)は高くして水はけを良くする
・ビニールトンネル栽培では、昼間に開放して結露を防ぐ
・下葉の除去で株元の蒸れを軽減
肥料管理の調整
過剰な窒素肥料は葉の繁茂を促し、結果として蒸れや湿度の上昇につながります。
・追肥の時期と量を見直し、リン酸・カリをバランスよく補給
・生育初期は控えめに、後半にかけて緩やかに施肥
また、未分解の有機肥料は地温と湿度を高める原因となるため、べと病が出やすい作型では化成肥料中心に設計することも効果的です。
4. 土壌と資材の衛生管理
べと病菌の胞子は土壌や支柱、収穫カゴ、作業着などにも付着して残存します。感染源の再利用を防ぐための対応も重要です。
必要な対応例:
・前作でべと病が出た圃場は1〜2年の輪作を行う
・支柱や防虫ネットは消毒液(逆性石けんや次亜塩素酸)で処理
・ビニールマルチやトンネル資材は使い回さず、洗浄乾燥
・土壌病害が常在化している場合は、太陽熱消毒やクロルピクリンでの消毒処理も選択肢に
5. 有機栽培・家庭菜園における対応
化学薬剤を使えない場合でも、べと病をある程度コントロールする方法はあります。
天然系資材の例
・重曹(炭酸水素ナトリウム)スプレー:菌の細胞膜を破壊
・木酢液やニームオイル:菌の活性を抑制する作用がある
・乳酸菌やEM菌資材:土壌の微生物バランスを整え、病原菌を抑える
ただし、天然系資材は即効性が弱く、べと病が進行している場合の「治療」には限界があるため、予防や初期段階での併用を推奨します。
6. 生育の立て直しと収穫までの管理
べと病にかかった株でも、早期対応ができれば収穫までこぎつける可能性は十分あります。
・回復した株は葉数を維持できるよう管理を徹底
・感染葉の除去後は乾燥した日を選んで施肥・灌水
・症状が改善しても治療薬の最低限のローテーションは維持
また、回復途中の株に対して無理な追肥や水やりをすると、かえって生理障害を起こすこともあるため、「控えめに、慎重に」が基本姿勢です。
まとめ
べと病の治療には、「初期発見」「薬剤選び」「環境管理」の3点を軸に、多角的なアプローチが求められます。菌を単純に殺すだけではなく、再感染を防ぎ、植物の免疫力と回復力を引き出すことが、本当の意味での「治療」と言えます。
また、畑におけるべと病の発症には作型や地域差もあり、年ごとの気象条件によって感染のスピードや症状も異なります。日々の観察を怠らず、病気のサインに敏感になることが何よりも重要です。
この記事を通じて、べと病という難敵に対する具体的な「治療の手引き」が、少しでも役立てば幸いです。


コメント