ネキリムシの生態と発生する原因、対策について紹介

ネキリムシ

ネキリムシの対策に苦慮されている生産者も数多くおられますので、今回はネキリムシ対策について紹介していきます。

ネキリムシは、主にヨトウガ科に属するガの幼虫の総称で、特にアブラムシやカブラヤガの幼虫がこの名前で呼ばれます。

名前の由来は、植物の茎や根を切るように食害する行動から来ており、特に若い苗や新芽に対して大きな被害を与えます。

ネキリムシの生態

成虫は夜行性であり、灯火に集まる習性があるが、幼虫は昼間に土中に潜み、夜間に活動して植物を食害します。

ネキリムシの発生は気温や地域に依存するが、一般的に春から秋にかけて複数回発生します。

特に温暖な地域では、年間を通じて数世代にわたって繁殖し、被害が続くことがあります。

越冬態は幼虫または蛹の状態であり、土壌中で冬を越し、春に再び活動を開始します。

成虫は葉や茎に卵を産み付け、卵から孵化した幼虫が土壌中に潜り込んで生活します。

幼虫は数回の脱皮を経て成長し、土中で蛹となり、その後成虫に羽化します。

幼虫期間は数週間から数か月であり、その間に活発に食害を行います。

ネキリムシの幼虫は、さまざまな植物の根、茎、そして葉を食害するが、特に柔らかい部分を好みます。

食害の対象となる植物は広範囲であり、野菜、花卉、穀物など、多くの作物が被害を受けます。

幼虫は地表近くの茎を食い切ることが多く、これが植物全体の枯死につながります。

被害は主に夜間に発生し、昼間は土壌中に潜んでいるため、発見が難しいです。

幼虫は夜行性で、日中は地中に潜んでいるため、被害が目に見えにくいです。

夜になると地表に出て、植物の茎をかじります。

特に若い苗の茎を食い切ることが多いです。

幼虫は移動しながら複数の植物を食害することがあり、一晩で広範囲に被害を広げることがあります。

ネキリムシは温度と湿度の変化に強く、乾燥や冷涼な環境でも生き延びることが出来ます。

土壌の質や農地の環境に適応しやすく、さまざまな農業環境で生存可能です。

乾燥した環境下では、土壌の深い部分に潜り込んで水分を確保し、湿った環境下では表層近くで活動します。

ネキリムシの天敵には、鳥類、昆虫、小型哺乳類が含まれます。

一部の寄生バチや捕食性の昆虫はネキリムシの幼虫に寄生し、その成長を抑制します。

また、湿気や過剰な降雨は、ネキリムシの活動を制限し、土壌中での生存率を低下させることがあります。

ネキリムシの幼虫は土の中に隠れているため、発見や防除が困難です。

土壌中の農薬や捕食者の影響を受けにくく、長期間にわたり生存することが出来ます。

防除には、土壌の管理、物理的な除去、そして天敵の活用が推奨されるが、完全な駆除は難しいです。

作物の輪作や間作を行い、ネキリムシが特定の植物に集中するのを防ぎます。

ネキリムシが好む植物を植えない、または植える場所を変えることで、被害を減らす事が出来ます。

天敵を導入または保護し、自然な形でネキリムシの個体数を抑える事が出来ます。

植物の基部を覆う防虫ネットの使用や、物理的な障壁を設置して幼虫の侵入を防ぐ事が必要です。

ネキリムシによる被害は、特に発芽直後や苗の成長初期に深刻であり、収穫量に大きな影響を及ぼすことがあります。

大規模な発生が起こると、農業生産に甚大な被害を与え、再播種や追加の管理作業が必要になることがあります。

そのため、予防策の実施や早期発見が農業において重要となります。

ネキリムシが発生する原因

ネキリムシは温暖な気候を好み、特に春から夏にかけての気温が上昇する時期に活動が活発になります。

気温が高くなると、卵の孵化率が上がり、幼虫の成長も促進されるため、発生が増加します。

地域によっては、温暖化の影響で冬の寒さが緩和され、越冬するネキリムシの生存率が高まり、翌年の発生が多くなることもあります。

同じ作物を連作することで、ネキリムシが好む植物が毎年同じ場所に供給されることになり、発生のリスクが高まります。

特定の作物に依存するネキリムシの幼虫は、連作によって安定した食糧供給が続くため、個体数が増加する傾向にあります。

特に、キャベツやレタス、トマトなどの作物を毎年同じ畑で栽培する場合、ネキリムシの発生が顕著になることがあります。

土壌の管理が不十分な場合、特に雑草が多く残っていると、ネキリムシの幼虫が隠れやすい環境が整い、発生しやすくなります。

作物の収穫後に土壌を耕さないまま放置すると、土の中に潜んでいるネキリムシの幼虫が生存しやすくなり、翌年の発生につながります。

また、湿った土壌はネキリムシにとって理想的な生息環境となり、過剰な灌漑や排水不良も発生原因の一つとなります。

ネキリムシは幼虫または蛹の状態で冬を越すが、適切な越冬場所があると、生存率が高まります。

冬の間に十分な防除が行われないと、春に大量の幼虫が孵化し、作物に大きな被害を与えます。

特に温暖な地域では、冬の間でも完全に活動が停止しないため、越冬が成功しやすく、翌春に再び大発生するリスクが高まります。

収穫後の害虫管理が不十分な場合、ネキリムシの幼虫が土壌中に残り、次の作物の植え付け時に発生する原因となります。

農業シーズンの終わりに、土壌中のネキリムシの幼虫を駆除するための耕起や防除が行われないと、個体数が増加します。

また、近隣の農地から成虫が飛来し、卵を産み付けることもあります。

雑草はネキリムシの幼虫にとって理想的な隠れ場所や餌となり、これが発生を助長する要因となります。

作物と競合する雑草が多いと、ネキリムシの幼虫が繁殖しやすくなり、発生のリスクが高まります。

特に収穫後や冬の間に雑草が放置されると、翌年のネキリムシの発生が著しく増加することがあります。

作物が密集して植えられると、風通しが悪くなり、湿気がこもりやすくなるため、ネキリムシの発生が促進されます。

密植によって、土壌の乾燥が防がれ、ネキリムシにとって快適な環境が形成されます。

また、密植により作物の基部が隠れやすくなり、幼虫が食害をしやすくなります。

台風や豪雨などの自然災害により、土壌が乱されるとネキリムシの幼虫が地表に出てきやすくなり、その後の天候条件が合えば発生が増加します。

また、異常気象による温度や湿度の急激な変化は、ネキリムシの発生パターンに影響を与え、予想外のタイミングで発生することがあります。

例えば、暖冬の場合はネキリムシが土の中での冬眠を短縮して、早期に活動を再開することがあり、これが早期の発生につながります。

柔らかくて新鮮な苗や若い植物は、ネキリムシの幼虫にとって好ましい食物であり、これが発生の原因となります。

作物の栽培初期に特に注意が必要で、発芽したばかりの苗はネキリムシに狙われやすいです。

栄養不足や病気にかかっている植物はネキリムシの食害を受けやすく、これも発生の一因となります。

ネキリムシによる食害の主な症状

ネキリムシの幼虫は主に地表付近の茎を食害し、茎を切断するため、苗や若い植物が倒れることが多いです。

被害を受けた茎は切り口が鋭く、食いちぎられたような状態になるのが特徴です。

特に幼苗の時期にこの被害が発生すると、植物が成長できずに枯死することが多いです。

地表に出た幼虫は、柔らかい新芽や若葉をかじることがあり、これにより植物の成長が阻害されます。

新芽が食害されると、植物は新しい葉や枝を出す力が弱まり、最悪の場合は成長が停止してしまいます。

若葉が部分的に食べられる場合もあり、葉に不規則な穴が開いたり、欠けた部分が見られます。

一部のネキリムシは土壌中で根を食害することがあり、これによって植物の吸水・養分吸収能力が低下します。

根の食害は地上部では見えにくいため、植物が萎れてきたり、成長が鈍化するなどの症状が現れます。

被害が進行すると、根が部分的に腐敗し、植物全体の健康状態が悪化します。

健康に見えていた苗が突然枯死する場合、ネキリムシによる食害が原因であることが多いです。

植物が急に枯れる際には、茎や根の部分に、ネキリムシの幼虫が発見されることがあります。

植物全体がしおれ、再生不可能な状態に陥ることもあります。

ネキリムシが果実の近くの茎を食害すると、果実が発育不良となり、成熟前に落下することがあります。

特に果菜類の作物で、このような現象が見られることがあり、収穫量の大幅な減少を引き起こします。

果実が不安定になり、風などの物理的な要因で簡単に落ちてしまいます。

ネキリムシが種子周辺や発芽直後の芽を食害することで、発芽が不均一になる場合があります。

これにより、畑全体の植物の成長がばらばらになり、収穫時期に差が生じることがあります。

発芽後に一部の苗が消失したり、成長が極端に遅れることも、ネキリムシによる食害の典型的な症状が出ます。

食害を受けた茎や根元が腫れる場合があり、これはネキリムシの幼虫が内部組織を食い荒らした結果として現れます。

茎の食害部分が褐色や黒色に変色し、腐敗が進行することもあります。

腫れや変色は、植物の上部への水や養分の供給が滞る原因となり、全体的な成長不良を招く事があります。

食害を受けた作物は成長が不揃いで、品質が低下することがあります。

特に根菜類では、ネキリムシの食害痕が残ることがあります。

食害が続くと、植物全体の抵抗力が低下し、他の病害虫の侵入や病気にかかりやすくなります。

特に根や茎が弱くなった植物は、風や雨などの環境ストレスにも弱くなるため、栽培環境全体に影響が出る可能性が高いです。

抵抗力が低下した植物は、成長が遅れるだけでなく、枯死するリスクも高まります。

 ネキリムシによる傷口が原因で、植物に細菌や真菌が侵入し、二次的な病害が発生することがあります。

特に湿潤な条件下では、茎や根の傷口から病原菌が侵入し、腐敗病や立枯病などを引き起こすリスクが増加します。

このような二次感染は、ネキリムシによる直接的な食害よりも深刻なダメージを植物に与えることがあります。

ネキリムシが大量に発生すると、土壌中に幼虫や蛹が密集し、土壌環境が悪化することがあります。

これにより、土壌の物理的性質が変わり、作物の根が正常に伸びることが出来なくなります。

さらに、幼虫が食害した植物の残骸が土壌中に残ることで、土壌病害の発生リスクが高まります。

ネキリムシによる食害の対処・予防方法

●薬剤を使用する前の防除

土壌を深く耕すことで、土の中に潜んでいるネキリムシの幼虫や蛹を地表にさらし、天敵や気候要因による駆除を促進します。

秋や冬の寒冷期に耕起を行うと、低温にさらされたネキリムシが生き残りにくくなるため、翌春の発生を抑制する事が出来ます。

また、収穫後に残った作物の根や茎を取り除き、土壌を清潔に保つことで、越冬する害虫を減らす事が出来ます。

異なる種類の作物を毎年交互に栽培する輪作を実施することで、特定の作物に依存するネキリムシの発生を抑制します。

特に、ネキリムシが好まない作物(例: 豆類、ニンニク、ネギ類など)を間に植えることで、土壌の害虫を減少させることが出来ます。

これにより、同じ害虫が毎年同じ場所で繁殖するのを防ぎ、被害の連鎖を断つことが可能となります。

苗の周囲にプラスチックや紙のカバーを設置する事で、ネキリムシが茎に接触して食害するのを防ぎます。

特に、苗の定植直後にこの方法を使用することで、若い植物が最も被害を受けやすい時期に保護が出来ます。

また、地面に黒マルチや防虫ネットを敷くことで、幼虫が土中から地表に出るのを阻止する効果があります。

雑草はネキリムシの隠れ場所や食料となるため、雑草を定期的に除去することで、発生を抑制する事が出来ます。

作物の周囲だけでなく、畑全体の雑草を取り除くことで、ネキリムシの生息場所を減少させることが重要です。

特に、作物の植え付け前に徹底的に雑草を除去することで、ネキリムシの食害リスクを大幅に減少させることが出来ます。

地表に出てきたネキリムシの幼虫を、早朝や夕方に手で捕獲して除去します。

光や湿気を好むネキリムシは、夜間に活動することが多いため、夜間に懐中電灯などで幼虫を探して捕獲することも可能です。

捕獲された幼虫は遠くに捨てるか、鳥や他の天敵に与えて自然に駆除することが必要です。

作物を適切な間隔で植えることで、風通しを良くし、地面が乾燥しやすくすることで、ネキリムシの活動を抑える事が出来ます。

密植を避けることで、作物の基部が隠れにくくなり、ネキリムシが茎を食害するのを防ぐことが出来ます。

また、風通しを良くすることで、湿気を減らし、ネキリムシの好む環境を作らないようにする事が必要です。

鳥やカエル、クモなど、ネキリムシの天敵を農地に呼び寄せることで、自然の生態系を利用した防除が可能となります。

巣箱を設置して鳥類を引き寄せたり、カエルが好む環境を整えることで、ネキリムシの個体数を抑制する事が出来ます。

これにより、ネキリムシの発生を抑えつつ、農薬を使用しない環境に優しい防除方法が実現可能です。

作物の収穫後に畑を放置せず、速やかに残渣を除去し、土壌を耕してネキリムシの生息場所をなくす事が重要です。

特に、収穫後に残った茎や根の部分を取り除くことで、土壌中で冬を越そうとするネキリムシを減少させることが出来ます。

この管理を徹底することで、翌年の発生を効果的に予防することが可能となります。

夏の高温期に、透明なビニールシートを土壌に敷き、太陽の熱を利用して土中のネキリムシの幼虫や蛹を熱死させる方法もあります。

シートを2~4週間程度敷いたままにすることで、土壌の表層から深層までの害虫を駆除することが出来ます。

この方法は、薬剤を使用せずにネキリムシを含む多くの土壌害虫を一度に防除できる効果的な手段です。

コンポストや緑肥を適切に使用することで、土壌の健康を保ち、ネキリムシの発生を抑制します。

健康な土壌は植物の成長を助け、ネキリムシの食害を受けにくい強い植物を育てることが出来ます。

また、有機物の適切な分解によって、土壌中の病害虫の生息環境を悪化させることが出来ます。

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