カメムシの生態と発生する原因、対策について紹介

カメムシ

カメムシの対策に苦慮されている生産者も数多くおられますので、今回はカメムシ対策について紹介していきます。

カメムシはカメムシ目(Hemiptera)に属し、世界中で約8000種類以上が知られています。

体は平たく、楕円形や盾形をしており、背中には楯状板と呼ばれる硬い部分が特徴です。

カメムシは植物の汁を吸うものが多く、農作物に被害を与える事があります。

カメムシの生態

特に果実や野菜に被害を与える種が多く、農業害虫として扱われる事もあります。

 一部のカメムシは肉食性で、小さな昆虫やその卵を捕食する事もあります。

カメムシは危険を感じたときに、強い臭いを発する事で知られています。

臭腺から放出される分泌物は、外敵から身を守る為の防御機構の一つです。

この臭いはカメムシ臭として知られ、人間にも不快感を与えるほど強烈です。

カメムシの繁殖期は通常春から夏にかけてで、雌は葉や茎の裏側に数十個の卵を産みます。

卵は数日から数週間で孵化し、幼虫は成虫と似た形をしていますが、翅が未発達です。

幼虫は数回の脱皮を経て成虫になります。

この間、約1ヶ月から2ヶ月かかる事が一般的です。

多くのカメムシは冬になると活動を停止し、寒さから身を守るために越冬場所を探します。

越冬場所として、木の皮の隙間や家屋の隙間などが利用される事が多く、人間の住居に侵入する事もあります。

冬の間は活動が鈍く、気温が上がると再び活動を始めます。

カメムシには天敵が多く、特に鳥類、カエル、クモ、寄生バチなどが挙げられます。

天敵が多い一方で、カメムシ自身も他の昆虫や植物に対して影響を与える存在です。

一部のカメムシは、他の害虫を捕食する為、生態系内で重要な役割を果たす事もあります。

カメムシは温帯から熱帯にかけて広く分布しており、特にアジア地域に多くの種類が生息しています。

生息環境は多岐にわたり、森林、草原、農地、都市部の庭園など、植物が豊富な場所に多く見られます。

一部の種は高山や乾燥地帯にも適応しており、過酷な環境でも生き延びる事ができます。

カメムシは農業害虫として、人間にとって厄介な存在となる事があります。

特に米や果物、野菜などの農産物に被害を与える事で、経済的な損失を引き起こす事があります。

しかし、すべてのカメムシが害虫というわけではなく、前述のように捕食性のカメムシは他の害虫を駆除する役割を担う事もあります。

カメムシが発する悪臭は、人間にとっても非常に不快であり、特に家屋内に侵入した場合、駆除が難しくなる事があります。

さらに、カメムシの一部には刺す種類も存在し、触れると痛みやかゆみを引き起こす事があります。

エダマメやダイズを食べるカメムシの代表はホソヘリカメムシです。

カメムシが発生する原因

カメムシの発生は、特に気温や湿度などの気候条件に大きく影響されます。

温暖で湿度が高い気候は、カメムシが繁殖しやすい環境です。

特に夏から秋にかけての気温が20℃以上に達する時期は、カメムシの活動が活発化しやすくなります。

また、温暖化の影響で、カメムシの生息域が北へ広がり、発生頻度も増加している事が報告されています。

カメムシは主に植物の汁を吸って生活する為、周囲の植生状況が発生に直結します。

農作物や果樹園が近くにあると、これらの植物を餌とするカメムシが大量発生しやすくなります。

特に、果物や野菜が成長する夏から秋にかけて、これらの作物がカメムシにとっての豊富な食料源となり、発生を促進します。

カメムシは寒い冬を越すために、建物の隙間や樹皮の裏、落ち葉の下などで越冬します。

越冬場所が豊富に提供されると、その地域でのカメムシの生存率が高まり、翌年春からの発生が増加します。

特に人間の居住環境に侵入しやすい種類のカメムシは、暖かい建物の中で越冬する事で、春先に大量発生する原因となります。

農業の拡大や都市開発など、人間の活動がカメムシの生息地に影響を与えます。

農地や果樹園の拡大により、カメムシが好む作物が増える事で、発生が促進される事があります。

また、温室栽培や大規模な灌漑システムも、カメムシにとって適した生息環境を提供し、発生原因となる場合があります。

カメムシの天敵となる鳥類や捕食性昆虫が減少すると、カメムシの個体数が増加する事があります。

天敵が農薬や環境の変化で減少すると、カメムシが増殖しやすくなる為、結果的に発生が増加する原因となります。

また、寄生バチなどの自然な防除機構が働かなくなると、カメムシの個体数が急激に増加する事があります。

春から夏にかけての温暖な時期は、カメムシの活動が活発になる時期です。

秋になると、越冬場所を求めてカメムシが建物内に侵入する事が増えます。

特に気温が急に下がると、暖かい場所を求めて大量に発生する事があります。

冬の訪れに伴うカメムシの越冬行動が、翌年の春からの大量発生の原因となる事が多いです。

風はカメムシの移動に影響を与え、大発生を引き起こす要因となる事があります。

風に乗ってカメムシが広範囲に移動し、特定の地域で大量に発生する事があります。

特に、台風や強風が吹いた後、風下の地域でカメムシの大量発生が確認される事があります。

都市部では、建物の壁や窓の隙間、エアコンの配管などがカメムシの隠れ場所として利用されやすく、発生が増える原因になります。

特に秋から冬にかけて、カメムシが建物内に侵入してくるケースが多く、人間にとっての問題となります。

カメムシによる食害の主な症状

カメムシは口吻(こうふん)と呼ばれるストロー状の口器を植物に突き刺し、内部の汁液を吸います。

吸汁された部分には、小さな斑点や針で刺したような傷が残り、これが吸汁痕と呼ばれます。

この吸汁痕は、果物や野菜の表面に黒い斑点として現れる事が多いです。

カメムシが吸汁した部分は、時間が経つと褐色や黒色に変色する事があります。

特にリンゴ、梨、桃、トマトなどの果物では、この変色が顕著であり、外観が損なわれます。

果実全体が不均一に熟す事もあり、収穫後の品質にも影響を与える事があります。

カメムシの吸汁により、果実が変形する事があります。

これは吸汁された部分が正常に成長しない為です。

例えば、ピーマンやナス、キュウリなどの野菜では、形が歪んだり凹んだりする事がしばしば見られます。

カメムシが吸汁すると、果物や野菜の内部組織が破壊され、食感や味が損なわれる事があります。

リンゴやナシでは、内部がスポンジ状になる「スポンジ果」と呼ばれる症状が現れます。

この症状は外観からは分かりにくい為、収穫後に品質検査で初めて発見される事が多く、被害が拡大しやすいです。

カメムシが若い果実に対して吸汁を行うと、果実が正常に成熟せずに落果する事があります。

これにより、収穫量が減少し、農作物の生産に大きな打撃を与える事があります。

特に柑橘類やブドウなどでは、未熟な段階での吸汁被害が深刻で、落果による収穫損失が顕著です。

カメムシが葉に吸汁を行うと、葉の組織がダメージを受け、黄変(葉が黄色くなる)や萎縮が生じる事があります。

葉の機能が低下する事で、光合成が十分に行えず、植物全体の成長が阻害されます。

これにより、果実や種子の発育にも悪影響が及び、全体的な収穫量の減少につながる事があります。

カメムシの吸汁行為によって傷がついた部分から、細菌や真菌(カビ)などが侵入し、二次感染を引き起こす事があります。

これにより、果実や野菜が腐敗したり、カビが生えたりする事があります。

二次感染が広がると、畑全体に被害が及ぶ事があり、深刻な農作物被害をもたらします。

一部のカメムシは、植物のウイルス病を媒介する事があります。

カメムシがウイルスを保有し、吸汁時に植物にウイルスを伝染させる為です。

これにより、ウイルス病に感染した植物は正常に成長出来なくなり、収穫量が大幅に減少します。

モザイク病や萎縮病などがカメムシによって伝播されるこのがあり、これらの病気は農作物に深刻な影響を与えます。

カメムシの被害が広範囲に及ぶと、果実や野菜の全体的な収量が大幅に減少します。

被害の程度によっては、収穫前に大部分が廃棄される事もあり、経済的損失が非常に大きくなる可能性があります。

特に大規模農場では、カメムシの発生が収穫期に直撃すると、被害が拡大しやすく、予防や駆除が遅れると甚大な損害につながります。

カメムシによる吸汁被害は、外観や味、食感など、農作物の品質全般に影響を与えます。

カメムシによる食害の対処・予防方法

●薬剤を使用する前の防除

作物をカメムシから守るために、防虫ネットを設置する事で物理的に侵入を防ぎます。

ネットはできるだけ目が細かいものを使用し、作物全体を覆うように配置する事で効果を最大化します。

特に若い果実や成長中の野菜に対して有効で、カメムシが飛来してくる時期に合わせて早めに設置する事が重要です。

カメムシは黄色に引き寄せられる性質がある為、黄色の粘着シートを使ったトラップを設置します。

畑や果樹園の周囲に適切な間隔でトラップを配置し、定期的に粘着シートを交換する事で、飛来するカメムシを捕獲出来ます。

早朝や夕方など、カメムシが活動しにくい時間帯に作物を観察し、手作業でカメムシを捕まえて除去します。

水を張ったバケツに捕まえたカメムシを入れて処分する方法が一般的です。

この方法は手間がかかりますが、カメムシの発生初期には非常に効果的です。

カメムシを吸引して捕獲するための吸引式捕虫機を利用する方法もあります。

特に広い農地や果樹園で効果的に使用出来ます。

捕虫機を移動させながら使用する事で、作物全体にまんべんなく防除効果を発揮させる事が出来ます。

カメムシの天敵である鳥類やクモ、カエル、寄生バチなどを活用する事で、カメムシの個体数を自然に抑制します。

天敵が生息しやすい環境を整える為に、畑の周囲に草地や低木を植える事で、天敵の棲息地を提供します。

特に寄生バチは、カメムシの卵に寄生して孵化を防ぐ為、カメムシの発生を抑えるのに効果的です。

単一作物のみを栽培するモノカルチャー環境は、カメムシの発生を助長しやすい為、多様な植物を混植する事でカメムシの発生を抑えます。

花やハーブ、特定の野菜を組み合わせる事で、カメムシの天敵を引き寄せる事が出来て、結果的にカメムシの被害を減少させます。

カメムシは草地や雑草の中にも生息する為、畑や果樹園の周囲の草刈りを定期的に行い、カメムシが潜む場所を減らします。

ただし、草刈りは全面的に行うのではなく、天敵が生息する一部の草地を残すなどのバランスが重要です。

同じ場所で同じ作物を連続して栽培すると、カメムシが定着しやすくなります。

作物を定期的に変える事で、カメムシが特定の作物に依存しづらくなり、発生を抑制出来ます。

畑をいくつかの区画に分け、作物の種類を定期的に変更する事で、土壌や作物に害虫が蓄積することを防ぎます。

健康な作物はカメムシの被害に対して強い抵抗力を持つ為、堆肥や有機質肥料を用いて土壌を改良し、作物の成長を促進します。

化学肥料の使用を控え、自然な栄養素を供給する事で、作物が健全に育ち、カメムシによる被害を受けにくくなります。

過度な潅水は作物を弱らせ、カメムシの食害を助長する事があります。

潅水は適切な量を守り、過剰に水を与えないようにします。

ドリップ潅水やマルチングを利用する事で、必要な部分に適切に水を供給し、余分な湿気を避ける事が出来ます。

カメムシの被害が多発する前に、作物の収穫時期を早める事で被害を最小限に抑えます。

特に果実などは、少し早めに収穫し、追熟させる方法が効果的です。

カメムシの発生時期を考慮して、作物の植え付けや収穫のタイミングを調整します。

発生期に当たる作物は避けるか、別の時期に栽培する事で被害を回避出来ます。

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